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わたしたちのすべての昨日

Natalia Ginzburg の新刊を偶然にも発見して、相当に驚いた。「人がやらないことしかやらない」という未知谷という出版社だからこそ、再びNatalia Ginzburg の作品を手に取ることができた。感謝感激である。Natalia Ginzburg を読んでいたのは、もうずいぶん前だ。邦訳されている作品は多くないから、あるものは全部読んだ。
『拝啓ミケーレ君』 
『ある家族の会話』 
『マンゾーニ家の人々』 
『モンテ・フェルモの丘の家』
『拝啓ミケーレ君』 以外は、須賀敦子さん訳で、須賀敦子さんが訳した本だから、私も読んだ。静かな本ばかりだ。でもとても心に残る本ばかりだ。

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ナタリーア ギンツブルグ Natalia Ginzburg
未知谷 2014-12-02

by G-Tools

北の町の母親のいない反ファシズム一家のなかで存在すら忘れられたような少女アンナ。アンナは
「革命をして生きたい」
と思っている。兄たちはファシズム打倒の行動へ。一九四〇年、イタリアが参戦、兄は意志を貫き、アンナは16歳で身籠もった。弟はパルチザンとなり……

長く続く、英雄のいない、革命と戦争の日々
名もなき小さな人びとの生と死、モラルと行動を描く叙事詩


アンナがこの本の中心となるはずなのに、家族の中で誰からも忘れ去られたような少女は、冒頭から数十ページは読者にさえ、存在を感じさせないような登場だった。ファシズムの嵐が吹き荒れる北イタリアの貧しい暮らし。淡々とした語りなんてものではないほど、奥の奥の方で小さな声しか聞こえてこないような本だった。会話も会話形式をとらず、ただただ文字が上から下、右から左に並ぶ。さほど登場人物が複雑ではないはずなのに、誰が誰だったか掴みにくい。が少し経つとその小さな声に、耳を澄まさずにはいられないほどの、強さが感じられるようになってくる。反ファシズム、反ナチスの政治運動に関わる家族や夫を持ったNatalia Ginzburg 本人とアンナが完全にだぶる。この会話(直接話法)の全くない作品は、あとがきによると、
作者は、「会話」など考えられなかったと言う。
獄中で死んだナタリーア・ギンツブルグの夫レオーネをはじめとする死者たちの声に耳を澄ますナタリーアの作品は声を出せないのだという。

「きみは葉っぱの上の怠惰で悲しい虫だ」
夫にそう云われたアンナ。空想の世界で革命に身を投じることを夢見ながら、葉っぱの影から外に出ようとしないアンナ。良くも悪くも、ファシズム打倒を声を発し行動を起こす兄や姉、隣に住む裕福な石鹸工場の子供たち。その中でアンナの意思はどこにも感じられない。イタリアが参戦した日、兄は公園のベンチでピストル自殺をした。アンナは好きでもない隣家の幼馴染と付き合い、16歳で妊娠するが、誰にも相談することができない。亡き父の友人である中年男性に救いを感じた彼女は、彼と結婚し、南部の貧しい村に引っ越す。村に送り込まれるユダヤ人たち。やがてドイツ兵が村にもやってきて、ユダヤ人たちは身を隠して息をひそめて暮らす。村に駐留していたドイツ人の若者を殺してしまった村民をかばい、アンナの夫はドイツ兵に銃殺された。そしてアンナは村民からリンチにあいそうになった女性を救い出した。

夫の死後、北の自分の故郷に戻ったアンナは、家族と再会する。そこにいるアンナは、一人の人間として確かにそこにいた。戦後の混沌は、物資や社会システムだけでなく、人々の心まで混乱させていた。正義感・価値観、それらは情報があるかないかだけでなく、翻弄され続けた庶民も何をすればよいのかわからないでいる。でもアンナと家族たちはそこで心を通い合わせていた。

未知谷からは、下記2冊も続けて刊行されていた。
『夜の声』
『町へゆく道』
立て続けに購入。再び、感謝感謝。
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