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ドニャ・ペルフェクタ: 完璧な婦人

スペインは鬼門だ。スペインというカテゴリーをつくってみたものの、スペインの本ってホントないわ・・・ スペインの作家と云われて、セルバンテスで止まってしまうのは、私のもの知らずだけの問題でもないと思うのよね。スペイン文学で検索すると、スペイン語文学がヒットし、それらはラテンアメリカの作家ばかりだったりする。だから見つけると驚いて買ってしまう。

477381506Xドニャ・ペルフェクタ: 完璧な婦人 (ロス・クラシコス)
ベニート ペレス=ガルドス Benito P´erez Gald´os
現代企画室 2015-03-29

by G-Tools

ベニート・ペレス・ガルドス(Benito Perez Galdos、1843年5月10日-1920年1月4日)はWikiにあった。ミゲル・デ・セルバンテスに次ぐ名声を持つという国民的作家だというが、国内での知名度に比較すると国外ではあまり読まれていない模様。が、あの、ルイス・ブニュエルが映画化している作品もあるという。ちなみに彼が監督したカトリーヌ・ドヌーヴ主演のフランス映画『哀しみのトリスターナ』はベニート ペレス=ガルドスの小説なんだとか。。。

19世紀後半に書かれたと知ってちょっとびっくり。
「19世紀後半のスペインでは、精神・政治・経済などすべての面で多様な〈イズム〉の信奉者間で〈極彩色の闘争〉が繰り広げられていた。この小説に登場する、一見すると良い人間たちは、いつかしら、自らの正しさを信じて疑わなくなり、それにつれて、異なる意見を持つ他者を許せなくなる。その〈信念〉はついには〈狂信〉へ転化して、最悪の破局へと向かった……」

硬派な古典文学かと思ったら、読んだらもっとびっくり。登場人物は極端にパターン化されていてやり過ぎのソープオペラのようだ。主人公の青年ペペ・レイはマドリードから田舎に住む叔母を訪れ、従妹のロサリータとの結婚話を進めようとする。そのロサリータの母親がドニャ・ペルフェクタ。登場するのはドニャ・ペルフェクタの取り巻きのような司祭や親族、土地の人々。それらが寄ってたかって、ペペ・レイの言動を全面的に否定し、非難し、ジメジメと虐めるのだが、それはイジメという子供じみたものではなく、明らかな悪意で、前半はひたすらその悪意に気持ち悪くなりながら、読み進む羽目になる。ロサリータは唯一ペペ・レイの味方で、二人は愛し合うのだが、その二人のロマンチック(であろう)会話はちょっと前近代的なロマンチックさ。そもそもこの田舎に住むドニャ・ペルフェクタや司祭をはじめとする村人すべての前近代的度合は、デフォルメされ過ぎていると信じたいのだが、スペインにあっては、そうそう・・・と同意するような度合なんだろうか?そして、あのシュルレアリスムとエロティシズムを描いたルイス・ブニュエルがこの作家を信奉するというのも、どうにも結びつかない私なんだが・・・

でもペペ・レイと彼を愛するロサリータが、そんな偏狭で狂信じみた自己中心的な偽善者たちに虐められるというわかりやすい二極化状態かというと、それはちょっと違った。ペペ・レイも進歩的な若者かというと、明らかに殺風景で貧しい田舎をバカにしているし、彼を愛するロサリータは母親に逆らうことさえ出来ない母子依存型親子だったりする。ペペ・レイに完全無欠な王子様像を期待してはいけなかったし、軍隊を利用して反撃に出た彼は結局、あっけなく殺されてしまう。勧善懲悪劇はここにはなかった。

スペイン文学は私にとっては無風地帯で、19世紀後半という時代背景が全く想像できないのだが、ドニャ・ペルフェクタ、つまり完璧婦人の慇懃無礼さ、偽善者ぶりは確かに完璧最強だ。これでペペ・レイが完璧な好青年であったなら、この本はただのロマンチック物語になってしまってつまらないんだろうな。”一見すると良い人間たち”は実は・・・というのは、人間の醜悪さの最たるものだと実感。
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コメント

[C470]

なるほどそう言われてみるとイスパニア文学というとセルバンテス等の古典以外はラテンアメリカ文学ばかりが有名ですね。近代から現代の有名作家ですぐに名前が出るのは、ミゲル・デリーベスとカミーロ・ホセ・セラくらいかもしれません。デリーベスは割とお勧めかも。
「完璧な婦人」は今度図書館で借りてみます。
  • 2016-11-04 20:11
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[C471] Re: タイトルなし

カミーロ・ホセ・セラは、貴重な(笑)ノーベル文学賞受賞者ですね。「パスクアル・ドゥアルテの家族」は読んだのですが、面白かった記憶はありますが、内容な完全に忘れています。ミゲル・デリーベスは『異端者』というのがあった記憶があります。スペイン・ポルトガル文学を探すと、彩流社という出版社にあたることが多いのですが、それ以外の出版社は、とんと本をだしてくれませんね。この本もスペイン文科省やらの助成金がでているようで、そうでもしないと出版は厳しいのかも知れません。

アートや建築で鬼才を多数輩出しているスペインのこと、文学の鬼才も絶対にいるはずだとは思うのですが・・・


> なるほどそう言われてみるとイスパニア文学というとセルバンテス等の古典以外はラテンアメリカ文学ばかりが有名ですね。近代から現代の有名作家ですぐに名前が出るのは、ミゲル・デリーベスとカミーロ・ホセ・セラくらいかもしれません。デリーベスは割とお勧めかも。
> 「完璧な婦人」は今度図書館で借りてみます。
  • 2016-11-07 09:56
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[C482]

ようやく読み終わっての感想ですが、ディケンズの一連の作品に似ていませんか?
もちろんペルフェクタを始めとするオルバホッサの旧弊な社交界は嫌な奴ばかりなのですが、ペペ・レイもいくら何でも思ったことを吟味せずにそのまま口に出しすぎですね。これでは周囲と不要な揉め事を引き起こすのも当然ですが、私自身もその傾向があるので反省しきりです。この時代のスペインは「スペイン最初の内戦」と呼ばれるカルリスタ戦争の時代ですが、この内戦はその後のスペイン社会へ大きな影響を与えていて、20世紀の「スペイン内戦」もその構図をかなり引きずっているとの事です。
  • 2017-01-09 16:18
  • X^2
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[C483]

すいません、ディケンズはほとんど読んでいません。パターン化されややデフォルメされた登場人物や、階級社会の描き方などが似ているのかなと想像しましたが、そんな感じでしょうか?

たかが小説ですが、登場する人たちが善人であれ悪人であれ、好きになれないとどうも満足感にかける本になってしまいます。架空の人物に文句を云っている自分に笑ってしまいます。

今年もどうぞサイトにお立ちよりください。年明けからかなりサボっていますが・・・


  • 2017-01-12 08:30
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