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ペルーの異端審問

156ページで¥1,900也。時間つぶしに新刊書店に入り、手ぶらで出られなくなって購入。このタイトルと表紙はアマゾンのサイトでインプットされていたが、タイトルとどう見ても、パディントンベアーに見えてしまうこの表紙のミスマッチのせいでスルーしていた。
「抱腹絶倒の中世欲情短篇集」で巻頭言が筒井康隆(どんな繋がり?かと思ったら、イワサキ氏は筒井康隆の大ファンなのだそう)で、マリオ・バルガス・リョサが高く評価し、この本にも序文を添えている。まあ、そんなことくらいでは騙されないが、異端審問と云いながら、抱腹絶倒らしいので、つい買ってしまった。

479481044Xペルーの異端審問
フェルナンド イワサキ Fernando Iwasaki
新評論 2016-07-29

by G-Tools

1961年生まれのFernando Iwasaki 氏は、ペルー生まれで、現在はスペイン在中。これが初邦訳なのだが、数回来日していた。作家というより、専門は歴史のようで、この『ペルーの異端審問』も、元はと云えば、彼の論文の資料であった裁判記録等らしい。拷問の惨たらしいイメージしかなかった異端審問をこんな好色珍事件集として編纂するのは、技術もさることながら、彼の人間性のユニークさなんだろうと思う。

異端審問という名の茶番劇はある程度は想像できる。告解に訪れる女性と性行為に及ぶ聴罪司祭や、男色や、偽聖職者になり済ます輩、淫らな女性信者に悪魔に取りつかれた修道女に、イエスと結婚したという空飛ぶ女、聖職者の精液を集めた女、どれも事実なんだろうが、歪んだ禁欲主義が生み出す悲劇はすさまじい。そういった珍事件自体の面白さ(?!)もさることながら、被告の屁理屈や、芋ずる式にでてくる色欲に負けた聖職者の言い逃れ、裁判記録という公式文書にこういった肉欲物語を真面目に記録する滑稽さ、身内の恥を取り繕うことに四苦八苦する困惑した異端審問官たち、といった事件のプロセスが抱腹絶倒だ。もちろん当時は抱腹絶倒劇なんかではなかったろうし、被告は皆それぞれに悲惨な仕置きを与えられている。

この本は決して、偽善の塊の異端審問やカトリックを茶化すことが狙いではなく、社会の裏に息づく人間の性?生?の物語であり、迫害と偏見の歴史の一部であり、カトリックを半ば強制的に押し付け、ペルー本来の文化や信仰を踏みにじった中世の植民地化の物語であるんだろう。

異端審問は中世の話ではあるが、なにやら昨今でも似たような茶番劇は沢山あるよなあ・・・と途中で気づく。権威を与えられたが故の、言い訳に言い逃れに屁理屈。それを逆手にとってとんだ茶番を曝け出してみせる全うな人間に期待しつつ、神も悪魔も人間が作り出した妄想なのではないかと、無信心な私なぞは思ってしまうのである。
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