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柿の種

どうして寺田寅彦を選んだんだっけ?と既に忘れたが、私には稀な日本人の作品、新たに新規一名追加。こうやって少しづつ増やしていこう(・・・という気持ちはかなりある)。

4003103777柿の種 (岩波文庫)
寺田 寅彦
岩波書店 1996-04-16

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「なるべく心の忙しくない、ゆっくりとした余裕のある時に、一節ずつ間をおいて読んでもらいたい」と寺田先生はおっしゃるが、オーバーフロー気味でもー何もしたくない!と倒れそうになっていた先週選んだのがこの本だった。心に余裕がないときにに、余裕が欲しくて読むのは、寺田先生としてはどうなんだろう?

実はお恥ずかしながら、寺田 寅彦氏の本業がなんなのかよくわからずにいた。物理学者だった。でもこれだけの随筆を書くのだから、二足の草鞋の御大で、俳人でもあった。夏目漱石の弟子でもあるという。1878年(明治11年)11月28日生まれ、1935年(昭和10年)12月31日没。随筆は大正末期から昭和10年ごろ、亡くなる直前までの日常の雑感が収められている。物理学者の視点もあるのだろうが、物理学者バカではなく、バカにならないよう戒めるように何気ない日常や自然の摂理や、植物の話が多々でてくる。かと思うと、関東大震災など当時の世相がネタになったり、デパートで食事をした話や、猫の話、まさに雑記なのだが、物理学者だが文学にも造詣が深いのではなく、人として何を見、何を聞き、何を感じるか、という姿勢の徹底なのではないだろうか?(失礼ながら)文章や表現の上手さというより、「視点」に驚かされることが多かった。物理化学を研究することと、俳句を詠むこと、それは両極端にあるもののように思いがちだが、寺田氏にとってそれはお互いに相通じる、天秤の右と左でバランスをとるべきものなんだということが最後に飲み込めてくる。

大正末期から昭和の初期にかけて描かれたものだが、不思議なくらい時代を感じさせない。現代においても、膝を叩きたくなる言葉ばかりだ。時代のせいにしてもいけないのだろうが、学ぶということは専門を突き詰めることと同時に、引いた視線を常にもつ心の余裕、自然の姿を謙虚に見つめ学ぶこと、昔は物理学者でも数学者でも画家でも作家でも、専門の垣根を超えた人が多かった気がする。自然にはあまりにも多くの未知の部分がある。あっと驚く発明も最先端の科学も必要だけれど、そんな最先端の英知をもってしても、自然の前には歯がたたないのだよ、人間は・・・・ 

”蓋し名言”な言葉は沢山あるが、それを書き留めるたところで、すぐに忘れてしまう私なので、せめて木や花や鳥たちのことをゆっくりと眺める日常を心がけることだけ、覚えておくより仕方あるまい。
油画をかいてみる。
 正直に実物のとおりの各部分の色を、それらの各部分に相当する「各部分」に塗ったのでは、できあがった結果の「全体」はさっぱり実物らしくない。
 全体が実物らしく見えるように描くには、「部分」を実物とはちがうように描かなければいけないということになる。
 印象派の起こったわけが、やっと少しわかって来たような気がする。
 思ったことを如実に言い現わすためには、思ったとおりを言わないことが必要だという場合もあるかもしれない。
(大正十年七月、渋柿)


そうそう、寺田先生は絵画も好きなんだな・・・ でもたぶん一番好きなのは植物と女性だと私は思う。
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