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二壜の調味料

Twitterで煽られてつい購入。ロード ダンセイニ と云われて、何を読んだことがあったっけ??と思いだしたのは、昔読んだこれだけだった。
4336030464ヤン川の舟唄 (バベルの図書館 26)
ダンセイニ卿 ホルヘ・ルイス・ボルヘス
国書刊行会 1991-05

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このブログで調べたら、3冊ヒットしたが、どれもアンソロジーだった。
書物の王国シリーズ 「夢」の中の「ヨハルネト=ラハイのこと」
書物の王国シリーズ 「架空の町」の中の『倫敦の話』
「謎の物語」の中の「野原」

4151824014二壜の調味料 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
ロード ダンセイニ 小林 晋
早川書房 2016-11-22

by G-Tools

私にとっては決して珍しい作家ではなかったが、改めてググってみると、彼は一体何者であったのか?という謎が残ってしまった。
ロード ダンセイニ はLord Dunsany、つまりはダンセイニ卿でして、本名はEdward John Moreton Drax Plunkettという。貴族が作家になってもよいが、ペンネームでLoadを名乗るのはあまり聞いたことがない。幻想的、神秘的な作品で知られ、ファンタジー文学に大きな足跡を残した、とWikiにある。実を云うと。↑の4冊で読んだ話はとんと覚えていない(全く・・・)。だから幻想的だのファンタジーだのと今更云われても、そうなのか。。。な私だ。アイルランドの貴族であった彼は、終始自分の出自と貴族であることを意識していたそうである。

この「二壜の調味料」 は謎解き探偵ものかと思っていたが、いやいや「謎の物語」に登場する作家らしく、謎ときよりもその”奇妙”さばかりが際立ち、なるほど「クイーンの定員」に選出されたのも納得いく。
調味料のセールスをしているスメザーズが同居することになったリンリーという青年は、きわめて明晰な頭脳の持ち主だった。警察に依頼されて怪事件の調査をはじめたリンリーは、スメザーズの手を借りながら、数々の事件の真相を明らかにしていくのだった。エラリイ・クイーンと江戸川乱歩が絶賛した表題作をはじめ、探偵リンリーが活躍するシリーズ短篇9篇を含む全26篇を収録。忘れがたい印象を残す傑作ミステリ短篇集!

能書き調べがなかなか面白かったが、この本、オリジナルのタイトルは「The Little Tales of Smethers and Other Stories」という。Smethersというのは、調味料ナムヌモの訪問販売をしているスメザーズのことだが、この男がふとしたきっかけでリンリーという紳士と共同で部屋を借りることになる。このリンリーなる紳士、Oxford出身のスーパーエリートで、頭が抜群に切れる。誰に指摘されなくとも、このコンビは、ホームズとワトソンだ。このコンビが登場するシリーズが9篇、他は、ノンシリーズ。この冒頭を飾るのが、タイトルにもなっている『二壜の調味料』で江戸川乱歩も絶賛したという超有名な短篇らしい。

このコンビものをさらに面白くしているのが、9篇の内約半分に登場するスティーガー。スティーガーは犯人である。しかしトリックを見破られても、証拠を残さない最強の犯人で、犯人であることが明らかでも逮捕できないスコットランドヤードを尻目に、レギュラー出演。『二壜の調味料』は確かに面白かったが、この3者が登場する短篇は、絶品の面白さだった。だいたい、犯人が常連になるミステリーなんてあるだろうか?(ホームズものであるのかな?)いや、ダンセイニの面白さは、謎解きにあるわけではなく、ミステリーでも人が死んでも、警察がでてきても、そこにあるのは、”奇妙さ”以外の何物でもない。おそらくダンセイニ卿にとっては事件を解決させることにはあまり興味がなかったと思われる。事件の解決を明らかにわかり易く語るよりは、最後のオチの一言の捻りに、アッとなったり、エッとなったり、ゾッとなってりする。

リンリーは部屋から出ず脳みそだけを使い、必要とあらばスメザーズを走らせる。スメザーズは謎の調味料ナムヌモの訪問販売をしている営業マンでしたかないのだが、どっこい彼も奇妙な味のする人間で、捜査に必要とあればナムヌモの訪問販売にかこつけて、容疑者宅を訪ねる。とにかくこのナムヌモとスメザーズの一種滑稽な存在が、この本の面白さを倍増させている。気が弱そうでいながら、自意識が高く、ナムヌモを販売することにかけては、誇りと絶大なる自信をもつこのスメザーズ。そして彼は何よりもリンリー信奉者で、それはもう愛だといっていい(笑)。なのに、時折訪ねてくるスコットランドヤードの警部には彼が部屋にいることさえ気づいてもらえないような、存在感のなさ(彼の自意識がそれを許さずささやかな反撃に出たりもする)。しかしこのシリーズ、語り部はスメザーズで、冒頭はいつも彼のこんな言葉から始まる。

わたくしのことを覚えていらっしゃるかどうか。リンリーさんに関するお話を一つ二つ披露した者です。名前はスメザーズです。素晴らしい頭脳の持ち主リンリーさんのことは記憶にとどめておく価値がありますが、わたくしのことは覚えていらっしゃらないでしょう。それでも多くのお宅にお邪魔したことはあるのですよ。覚えている方もいらっしゃるかもしれませんが、わたくしはナムヌモのセールスをやっています。

さて、リンリーとスメザーズものが面白くて他の篇を読んでいるときは気が抜けてしまった。そして謎の調味料ナムヌモ、肉に振りかければ絶品の料理となるが、野菜に使うと二度と食べようとは思えないという代物らしい。正体は結局明かされず気持ち悪さだけが残るこの脇役ナムヌモ。英語表記はNumnumo。きっと壜は無味乾燥な見た目なんだろうなあ・・と妄想いや想像している。
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コメント

[C484]

この本読んではいませんが、NumnumoはなーんとなくMarmiteを想像してしまいました。
  • 2017-01-23 23:14
  • mAr
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[C485]

Marmite!! ベジタリアンの友、Marmiteですねぇ。
最初はエッとなりますが、食べ方のコツを飲み込むと、クセになるあたりが、摩訶不思議なNumnumoと共通するかも知れません。
  • 2017-01-26 08:44
  • Green
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