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夜の声

未知谷から刊行されたナタリーア ギンツブルグ初期三部作も、これで最終。もうないのかと調べてみるが、多分寡作な作家だったようで、そもそも著作が少ない。

4896424999夜の声
ナタリーア ギンツブルグ Natalia Ginzburg
未知谷 2016-06

by G-Tools


『こんな風でした』
『わたしの夫』
『夜の声』
の中篇が3篇。

全2作と変わることない低音重奏とちょっと突き放したような硬い文章。ググってもほとんどレビューがヒットしないので、世の人々には知られていないのだろう。まあ、そんなことはどうでもいい。

上手くいかない結婚にもがく女性たち。独立心が旺盛でも政治に染まるでもなく、極めて普通のそして貧しい田舎で暮らす女性たちだ。不器用で正直云えばパッとしない人生だ。作品の主人公でありながら、何の主張もないように見える。戦争とファシズムに破壊された町、交錯するイデオロギー、どうでもいいことではないのだろうが、ここでは政治的なものではなく、誰も彼もが知り合いのような閉塞的な社会では、一見些末な日常のようでさえある。おそらくもがいている女性には、ファシズムも社会主義も共産主義も興味のないことかもしれないのに、ひたひたと確実に彼女たちの日常を侵食している。淡々と描かれる日常の行間の中にそれが紛れもなく潜んでいる。

イタリア文学をあれこれ読む前の私にとってのイタリアは陽気なグルメの国だった。しかし、文学の中のイタリアは、ファシズムやそれと戦うパルチザンや、アンチファシズムとしての共産主義と、戦後の貧困に喘いだ国だった。少なくとも地方の田舎では喰うに喰えない時代を経た貧しい時代があった。イタリアの本を読むといつもそのことを思う。イタリアは貧しい国だった、かつて日本がそうだったように・・・・そもそもイタリアの国家統一など19世紀後半になってようやく成し遂げられたに過ぎない。小国がひしめき政治的に混乱している時代の方がずっと長い。そしてカトリック総本山バチカンを内部に抱えるキリスト教国家でもある。イタリア人の陽気なイメージとカトリックというのが、長いことどうにも結びつかなかったのだが、それは”敬虔な”という形容詞をカトリックの前に着けてしまうからいけないのだろうということが、少しずつ分かってきた。バチカンのいい加減さを見よ!カトリックはきっと本来(良くも悪くも)おおらかなものではないだろうか?(強引か?)

Natalia Ginzburg をあまり語れなくなってしまったので(笑)、脇道に逸れてみた。沢山の人に読まれなくてもいいのだが、彼女は長く長く読み継がれる作家であってほしい。
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[C486]

わたし、2年前にスペイン語を始めるまでは、イタリア語をやっていました。でも、そうなんですよ、暗い本が多い。一緒に勉強してた仲間もみんなそう言ってましたね。勉強するのにモチベーションが下がる(笑)
スペイン語は、Greenさんも言ってるように、スペイン文学は多くはないけど、ラテンアメリカの文学があるから世界広がる感じですね。
この下の記事のドノソの「別荘」かなり難解そうでとても長いけど、そのうち(!)挑戦してみよう。
こうやって、Greenさんの記事が参考になっているんです(^_-)
  • 2017-02-03 19:49
  • mAr
  • URL
  • 編集

[C487]

文学に関する限り、イタリアはくそ真面目で暗い(笑)

ドノソの「別荘」は難解ではないと思います。本の厚みと”ドノソ”というネームに最初はちょっと怖気づきましたが、途中でやめられなくなりました。暗喩の謎は多いですが、ストーリーを追っていくのは難しくないですよ。是非・・・

  • 2017-02-06 09:24
  • Green
  • URL
  • 編集

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Author:Green
夜な夜な本読む・・・日本語は海外文学ばっかり。英語はフィクションばっかり。喰わず嫌いでどこまでいけるのか?

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