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Severina

「The Beggar's Knife」に続き、Rodrigo Rey Rosaの英語版を探してみた。驚くことに訳者のChris Andrews はRoberto Bolanoを訳していた人だ。私が唯一スペイン語⇒英語の翻訳者として知っている人。ここにもBolanoと Rey Rosa の繋がりがあって、Bolano好きが Rey Rosa も評価してくれているのね!とちょっと嬉しくなった。嬉しくなったが、この冴えない装丁の写真はとんといただけない。折角の Rey Rosa が台無しである・・・・

0300196091Severina (The Margellos World Republic of Letters)
Rodrigo Rey Rosa Prof. Chris Andrews
Yale University Press 2014-02-25

by G-Tools

主人公の本屋は、Rey Rosaお得意の名無しだ。舞台はRey Rosaの出身、グアテマラ。Severinaは彼の本屋に時折来店しては、かなり良い本をくすねていく本泥棒で、でも美しい女性。そしてその万引きに気づいていながら、何も云わず、その女性に恋をしてしまう。Rey Rosa作品にてこれはLove Storyだ。もちろん悲恋だとかHappy Ever Afterだとか、そのくくりで図れない本でもある。Severinaの正体も謎だが、本屋の正体もそれに劣らず無気味だ。彼は、Severinaが万引きした本のリストを延々と作成し、跡をつけ、住んでいる場所を見つけ、そのPensionに引っ越しまでする。彼のひたすら観察し続ける執拗さは、偏執狂というより、離れるに離れられない妄想に取りつかれているといった感じだ。二人はまもなく知り合いになる。引越して気づいたのは、彼女は男性と住んでいたことで、本屋はそれを旦那だと思うが、後になってそれは祖父であることがわかる。そして祖父が植物状態になったことをきっかけに、二人を自分に家に住まわせる。祖父はその後(はっきりと明言はしていないが)、Severinaの手によって延命装置を外され、命を落とす。遺体の処理を巡ってわかったことは、彼ら二人は真っ当なパスポートを持っていないということだった。結局遺体は遺棄され埋められる。偽パスポートを手にした二人は、国を出る。それは愛の逃避行でもないし、悲惨な未来を象徴するでもない(というか、私にはわからん)。

万引き本のリストは、すべてああ・・・とわかるものではなかったが、わかるだけでもかなり壮観なものだった。本屋にとって本は人生のすべてであり、その情熱はよくわかる。Severinaは本は読むために盗むという。彼女にせよ本屋にせよ、Bookishであることは共通する。彼の本屋もLa Entretenida (たぶんEntertainment的なスペイン語)といいながら、どう想像しても古式ゆかしい古書店に思える。このあたりは、Rey Rosaお前も本の人なのね・・・と勝手に思い込んで喜んでいる。

途中Severinaは本屋の男にボルヘスの迷宮の図書館に入ったことがあるとのたまう。勿論、胡散臭い話しではあるのだが、これがただのBookish同士の会話の一篇ではなく、最期のどんでん返しへの前振りだった。Severinaが取り出したのは、ボルヘス御大の手書きによる書き込みがある本、彼女曰く、ボルヘス迷宮図書館からいただきてきたものだという。これを差し出したことで、目出度く二人は逃避行となったのだが、あまりにもよくできた偽物よ。。とSeverinaは嘯くのだなあ。

サスペンスモードで進行するRey RosaのLove Story。100ページにも満たない本だが何だかゾクゾクと興奮する本だった。いいなあ、Rey Rosa。
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コメント

[C488]

あ~!Rey Rosa!英語で読んだんですね。羨ましい!
ふうん。Bookishな彼ら。興味深い。
読んでみたいと思わせるGreenさんの記事。楽しいです。
これ翻訳してくれませんか?
因みに、La Entretenidaは愛人、情婦・売春婦。やや古語みたいですけど。

Rey Rosaの訳をしている杉山晃さんの翻訳本に最近はまっています。Greenさんは図書館はあまり利用しないのですよね。私はもっぱら図書館派。読んだ後どうしても手元に残したい本だけ買います。図書館にない本は神奈川県内の各地の図書館から手配してくれます。それでもなかったら買ってくれるみたいです。

この訳者の著書「南のざわめき」(現代企画室)は南米文学のいろいろな本が紹介されていてありがたい本です。オススメ。ちなみに続編の「ラテンアメリカ文学バザール」はイマイチでした。
杉山氏の訳でペルーのホセ・マリア アルゲダスがかなりお気に入り。レイ・ローサに続き日本語で出版されたものは全部読んでしまいました。今日読み終わった「ダイヤモンドと火打ち石」は大磯図書館から来ましたよ。
  • 2017-02-09 22:34
  • mAr
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[C489]

スペイン語でトライしたら??

彼の作品はまだまだ英語がないものもあるみたいです。もうちょっと捜索してみようと思ってますが、これだけ面白くても、ロベルト・ボラーニョほどにはなれないのが、残念です。ガイブンは厳しいですよね。

翻訳?プータローの時に暇すぎて一度Paul Austerの本を訳したことがあります。300ページくらいでしたが、暇とはいえやっぱり大変でした。

「南のざわめき」ちょっと欲しくなりました。ホセ・マリア アルゲダスも欲しくなりました(笑)
木村 榮一さんの「ラテンアメリカ十大小説」は読みました。この方の翻訳ってあとがきがとてもよくて(あとがきも、か)、つまりは日本語がきれいなのだということを、「ラテンアメリカ十大小説」を読んでしみじみ思いました。
  • 2017-02-10 17:42
  • Green
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[C490]

Severinaのスペイン語版、そういわれて読んでみようかな?と言う気になってAmazonを見ていたら、ポチっとしてしまいました。頑張ってみます。

そうそう!私も木村榮一さんの翻訳好きです。あとがき、すごいですよね!図書館で選ぶ際にまず、あとがきや解説から読むようになってしまいました。あとがきよんで、次に読む本を選んだりします。

翻訳は日本語力ですよね。フリオ・リャマサーレスの「黄色い雨」「狼たちの月」を読んでその作家をとても好きになったけど翻訳者の力もあるなあって思いました。美しいんですよね。(このことを共感できる人に会えて嬉しい!Greenさんありがと!)

  • 2017-02-11 19:19
  • mAr
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[C491] Re: タイトルなし

Severinaのスペイン語版買っちゃいましたか!

フリオ・リャマサーレスの「黄色い雨」のあとがきはよかったですよね!いつもいつもとはいかないかもしれないけれど、あとがきを読んで、その本に対する思い入れが伝わってくる本は面白いですよね。逆に文学的解説や解釈に終始していると、その程度ね・・・と思ってしまったりします。それにあとがきを読むと、翻訳家の生の日本語力がバレてしまうので(笑)、あとがきは大事です。



  • 2017-02-12 19:30
  • Green
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[C492]

>それにあとがきを読むと、翻訳家の生の日本語力がバレてしまうので(笑)

キビシッ!(笑)あはは~~ヽ(^o^)丿
  • 2017-02-12 21:56
  • mAr
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[C521]

今更ながらだけど、昨日スペイン語の先生に確認したら、La Entretenida はやっぱり楽しい・おもしろいだって。失礼。m(._.)m
辞書的にはLa がついて名詞だと愛人・妾となってるんだけど、古くはそうだったけど…って。形容詞にLa つけて店名なのね。
遅〜い話題ですみません。
  • 2017-06-17 11:07
  • mAr
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  • 編集

[C522]

いえいえ・・・

やったあ、の気分ですか(?!)
  • 2017-06-19 12:49
  • Green
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Author:Green
夜な夜な本読む・・・日本語は海外文学ばっかり。英語はフィクションばっかり。喰わず嫌いでどこまでいけるのか?

流行りモノとか、人気モノとかすっかりどうでもよくなり、本と散歩とあとはぼぉ~~っとすることだけが今の楽しみ(それでいいのか?)

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