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深い川

ホセ・マリア アルゲダス は初。ペルーの作家でインディオの言葉、ケチュア語を活かしてインディオの世界を描いた作家だとのこと。

4773893109深い川 (ラテンアメリカ文学選集 8)
ホセ・マリア アルゲダス Jose Maria Arguedas
現代企画室 1993-12

by G-Tools

両親は白人でありながら、早くに母親を亡くしたホセ・マリア アルゲダス は継母や義兄と上手くいかず、使用人のインディオ達の中で暮らし、彼らに囲まれて育った。そして不良の義兄に強姦の現場の見張り役をやらされるなど、継母や義兄との関係はホセ・マリア アルゲダス 少年の精神を痛めつけ、晩年までそのトラウマが残ったということだ。そんな関係に耐えられず家を飛び出した少年はインディオの村で暮らし、13歳で寄宿学校に入学する。彼の生涯については、あとがきで語られているが、それは読んでいるだけで、心が痛くなるような話だった。そしてこの『深い川』を読むと、その人生を抜きにしてこの本は語られれないし、寄宿学校での実際の生活を土台として書かれていることもよくわかる。『深い川』に登場する孤独な少年エルネストは、ホセ・マリア アルゲダス の分身だ。

ラテンアメリカも白人と原住民、富める者と貧しきものの格差を抜きには語れない。いままであまり意識して来なかったが、所謂”ラテンアメリカ文学のブームの中心になったのは、そこそこのインテリでそこそこの中産階級で、だいたい白人で、ヨーロッパ大陸との繋がり、スペイン語で作品を書き、だからこそ世界の中のラテンアメリカを主張できたのかもしれない。その功績は大きいし、それはそれで素晴らしことではある。私が今まで読んできたラテンアメリカ文学は、前衛的で幻想的で、豊かで自由に時や場所を飛び越え、もちろん彼らだって混血文化のラテンアメリカの現実を描いたし、アイデンティティーへの自問もした。でも、そんな今までのラテンアメリカとは、ホセ・マリア アルゲダスは少し違う世界にいるような気がする。

大きなエピソードは、塩を巡る暴動とチフスの蔓延という事件だが、その狭間で、”白痴”と呼ばれている知的障害の少女と寄宿生たちの性的遊戯や、神父とのやりとり、そして大きく占めるのは、エルネスト少年が描くアンディスの風景と、キリスト教世界と対比するように描かれるインディオたちの自然への畏敬だ。これらはリアリティーと呼べるほど、私には実感はないものなのだが、マジックリアリズムと呼んではいけないような物悲しさだけはひしひしと伝わってくる。プリミティブなものの残酷さ。少年が繊細で感受性が豊かなだけに、その危うさは痛いほどだ。

インディオや黒人に対する偏見は、私が想像する以上に強いものがあるはずなので、エルネスト少年すなわちホセ・マリア アルゲダス自身が、白人でありながらインディオに囲まれ、インディオの側に立った人間として生きていくということは、途轍もない偏見と超えることは絶対に不可能な別別の世界で生きるということなんだろう。彼は58歳でピストル自殺をしたという。生涯病んだ精神が回復することはなかった。異文化の狭間からずっと逃れられない人生だったのだろうか?
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[C497]

Arguedas、他のどの作家とも違う感じで新鮮ですよね。この空気感がなんか魅力的。もちろん、面白かった!楽しかった!という作品ではないけれど、すごーく心に残る。辛いけど、後味悪くなく。織り交ぜられるケチュア語も作品に輝きを持たせてて。スンバイユという魔力を持ったコマのところ、ワクワクしました。短編集もいいですよ。

そうそう、Severinaやっと届いて翌日から読み始め、昨日やっと8日かかって読み終えた。Rey Rosaの文はシンプルで読みやすかった!でも南米仕様なのか勉強したのとは違う動詞活用だったり・・・
  • 2017-03-09 19:57
  • mAr
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[C498]

お薦めに従って読んでみました。

>面白かった!楽しかった!という作品ではないけれど、すごーく心に残る。辛いけど、後味悪くなく。

は同感です。

Severina読みましたか!英語もシンプルです。決して難しくない(そして話は長くない)。そして読めた先にあるものが面白いので、私もこの先彼の本は英語がいいな、と思っています。英語になっていないものもあるので、スペイン語で読めるなら最強ですね。
  • 2017-03-10 13:18
  • Green
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Author:Green
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