イレーヌ・ネミロフスキーの二冊目は短篇集。
以下、5篇
『舞踏会』
『秋の雪』
『九月の午餐』
『幸福な岸辺』
『腹心の友』1929年から1941年までに発表された5篇。彼女の作家としての活動期間はほんの10年足らずだったが、長短篇あわせて、20作を超える作品を残しているから、自らの激動の半生を反映させながら、題材は次から次へとほとばしり出ていたのかも知れない。死後、2004年になって発見された『フランス組曲』を契機として、再評価され、むしろ生前より現代の方が評価が高いのだろう。が、ロシア革命を逃れ、フランスでフランス人になろうとカトリックに改宗してまで帰化しようとしたのに、受け入れられなかった挫折も含め、一体何を思って短い人生を過ごしたのかは、日本語で読めるものはあまりない(フランスでは出版されているらしい)。
個人的な一押しは「秋の雪」。ロシア(ウクライナ?)の地からパリへ逃れた裕福な一家に代々乳母として仕えた女性の話し。狭くて暑くて風通しの悪いアパートで老いてゆく彼女が、故国を思い出し、その寒さを焦がれながら雪を待つシーンが残像に残るよう。
2冊完了して思うのは、人物の心情描写の細かさ、それは物語の中で相反する人物の双方を偏ることなく、客観的に平等に描いている凄さだと思う。が、その心情描写の細かさは、読んでいて時々こちらの神経が痛く、辛くなるくらいで、readabilityが高いが故に止めることもできず、かなり精神的にはやられる。「舞踏会」然り、「腹心の友」然り。痛さには個人差はあるだろうけれど、このreadabilityの高さは、意図せずしてエンタテイメント要素も豊富で、読者に満足感を与えることは間違いないんだろうな。
作家デビューを果たし、評判をとった『ダヴィッド・ゴルデル』と、『フランス組曲』までは、読むべきかしらん、と思いながら、アマゾンを眺めているが、高止まりの古本価格に現在足止めを食っている。
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