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オシリスの眼

なんでも、ここに登場するソーンダイク博士は、当時シャーロックホームズと肩を並べる探偵だったらしい。元々医者であったRichard Austin Freemanだが、体調を崩し、遅咲きながら作家に転身。後世の推理小説家からも、お手本的な作品として評価されているらしい。

4480433902オシリスの眼 (ちくま文庫)
R.オースティン フリーマン R.Austin Freeman
筑摩書房 2016-11-09

by G-Tools

エジプト学者ベリンガムが不可解な状況で忽然と姿を消してから二年が経った。生死不明の失踪者をめぐって相続問題が持ち上がった折も折、各地でバラバラになった人間の骨が発見される。はたして殺害されたベリンガムの死体なのか?複雑怪奇なミステリに、法医学者探偵ジョン・ソーンダイク博士は証拠を集め、緻密な論証を積み重ねて事件の真相に迫っていく。英国探偵小説の古典名作、初の完訳。

久しぶりに王道に出会った気分。推理小説としても王道だが、小説としても王道だ。犯人が誰なのかの当てっこに終わらず、殺人の動機と犯罪のプロセスの描き方が実に丁寧。地味で無意味に饒舌と取られるかもしれないと心配になるが、実際に犯人は誰かというより、トリックの謎の方が面白い。登場人物は案外少なく、ベリンガムの弟とその娘、そしていとこ、ベリンガムの弁護士、以上だ。つまり犯人はこのうちの誰かだ。対する謎解きチームは、法医学者探偵ジョン・ソーンダイク博士と彼の友人、そして教え子のバークリーが語り手となって進んでいく。きっかけは、バークリーがベリンガムの弟ゴドフリー・ベリンガムの主治医(代理)になったことから始まる。行方不明となったエジプト学者ベリンガムがその直前に、厄介な遺言書を残していたことから、この生死不明の遺言者の遺産をめぐる殺人事件が起きる。

ソーンダイクは安楽椅子探偵で、パシリ担当はバークリーといったところ。理論を徹底的にに組み立てていくタイプで、天才にありがちな勘というものは、そこには登場しない。”帰納論理学”という言葉で彼の探偵としての卓越した脳みそを表現していた文章もあったが、科学者である彼は、事実を丹念にそして公平に収集し、積み上げ、結論を導く。つまり最後には、こうであるとしか考えられない、という結論と、その証明。ネタあかしも、驚くのだが、云われてもれば至極納得のトリックであり、奇想天外などんでん返しではない。

ヴィクトリア朝?エドワード朝?のロンドンを舞台に、当時の匂いもプンプンするし、エジプトものということで、大英博物館に訪れる場面もしばしば登場する。バークリーが、ゴドフリー・ベリンガムの娘に恋をするという現代から見ると何とも奥ゆかしい恋愛も絡むのだが、二人がデートをするのが大英博物館で、ふたりでエジプト文献を探し、ロンドンの街を歩くのだな・・・

ひとつだけ不満があるとすれば、ソーンダイク博士は老人ではなく、そこそこに若い法医学者探偵だったということを途中で知った。えーーーである。バークリーが教え子だったというし、博士との会話から察するに、どう考えても初老の博士だと思っていた。そう途中で気づいても、どうしても初老のソーンダイク博士しか想像できない。ここが妙に色気のあるシャーロック・ホームズに若干水をあけられてしまう理由なんじゃなかろうか?確かにホームズものは彼のエキセントリックな性格が楽しいという側面は多分にある。ソーンダイク博士は人間としてまとも過ぎるのだな。

彼の別の作品「歌う白骨」が青空文庫にあることを発見した。訳の出来はどうなのだろう?まあ、読んでみるか・・・  
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