Entries

壁抜け男

昔々といっても4年前ほど、こんな本を読んでいた。
「マルタン君物語」 
きっとこの後にもう一冊と思って買ったものの、その後本棚で眠り続けていたと思われる。
4152087862壁抜け男 (異色作家短篇集)
マルセル エイメ Marcel Aym´e
早川書房 2007-01

by G-Tools

「壁抜け男」でググると、最初にヒットしたのは、劇団四季の舞台だった。へえ---。本国フランスでも舞台化され、そして日本にやってきたのだが、マルセル・エイメ侮りがたし。そしてどうもこの「壁抜け男」がやはり一番の有名作と思われる。どんなに有名かというと、これも今回知ったが、パリ、モンマルトルに壁抜け男がいる!
壁抜け男 まさしく壁抜け男が、壁を抜ける途中だ。

下記7篇。そもそも寝かし続けたのは、私が勝手にのほほんとしたユーモア作品として認識し、コンパクトで薄めの本なので、急ぎ読まずとも好い息抜き本になってしまったからで、今更ページをめくったら、2段組になっていて驚いた。短篇集だが、案外読みでがあった。
『壁抜け男』
『カード』
『よい絵』
『パリ横断』
『サビーヌたち』
『パリのぶどう酒』
『七里の靴』

マルセル エイメ はあまり裕福な家庭の出ではなく、職業も点々としている。愛想もなく人付き合いも得意ではなかったらしい。奇想天外な話しではあるが、その奇想天外さが全面に打ち出されているというより、登場するのはみな庶民で、生活感が満載で、むしろその奇想天外な枠組みの中で繰り広げる人間模様だ。だからシュールというより人間臭くて、ちょっと物悲しい。壁を通り抜けられる能力、2日の内、1日しかこの世に存在できない人間たち、自分の分身を何万にもつくっていく女性、眺めるだけで満腹になれる絵を描く画家など、素っ頓狂な設定ながら、そこでもがく人間は日常生活を営んでいる。だからなのか、プロットで勝負ならもっと短く出来るだろうが、そうではない。オチで勝負はしていない。戦中戦後という時代背景も濃厚。

で、どれも秀逸ながら、個人的な一番は『サビーヌたち』に決定することにした。”たち”って何かと思ったら、サビーヌはいくらでも分身を作れる。最初は愛人と付き合いためにもう一人作っただけだったのに、どうも惚れっぽい彼女は次から次へと愛人と付き合うために、分身をつくる。その分身が子供を産んだり、分身が分身を生み出したり、揚句の果てには何万だか何十万だかのサビーヌが世界に散らばることになった。どちらかと云えば貞節を守るタイプなのに、仕方なくなると分身を作って短絡的に事を処理するような可愛さが何とも憎めない。

暗い時代の寓話ともいえる短篇集。でもケセラセラのフランス臭もあり、”嗚呼、人生万歳” な一冊だった。
関連記事
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://besideabook.blog65.fc2.com/tb.php/755-c3565c1b

トラックバック

コメント

[C520] 管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

[C527]

すいません、このコメント見落としていました。
ブックマーケットのこと知っています。できることなら、出店もしたいし本も見に行きたいところですが、とてもそんな状態ではないので、諦めました。東京にいたころ、谷中界隈で一箱古本市というのをやっていて、それはのぞきに行っていたんですけどね・・・



  • 2017-06-22 22:35
  • Green
  • URL
  • 編集

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

プロフィール

Green

Author:Green
夜な夜な本読む・・・日本語は海外文学ばっかり。英語はフィクションばっかり。喰わず嫌いでどこまでいけるのか?

流行りモノとか、人気モノとかすっかりどうでもよくなり、本と散歩とあとはぼぉ~~っとすることだけが今の楽しみ(それでいいのか?)

Calendar

<
>
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 78
9 10 11 12 13 1415
16 17 18 19 20 2122
23 24 25 26 27 2829
30 31 - - - - -

全記事

フリーエリア

フリーエリア