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復讐

まだ残っていた『書物の王国』シリーズ第16巻の「復讐」。クソ暑い夏を少しでも涼しく乗り切ろうと、怪談話の代わりに復讐劇で肝を冷やそうとしたが、背筋が凍るようなことはなく、このアンソロジーはやっぱりいいなあ・・・とのんびりとしてしまった。

4336040168復讐 (書物の王国)
ヘンリー ジェイムズ
国書刊行会 2000-08

by G-Tools

「骨仏」 久生十蘭
「心臓料理」(ボッカッチョ『デカメロン』)
「伍子胥列伝」(司馬遷『史記』)
「復讐鬼」 南条範夫
「サノクス令夫人」 The Case of Lady Sannox コナン・ドイル(Conan Doyle)
「牝猫」 The Squaw ブラム・ストーカー(Bram Stoker)
「人虎報仇」(蒲松齢『聊斎志異』)
「ブーレマンの家」 テオドル・シュトルム(Theodor Storm)
「復讐」 三島由紀夫
「熊狩り」 ウィリアム・フォークナー(William Faulkner)
「スレドニ・ヴァシュター」 Sredni Vashtar サキ(Saki)
「牛人」 中島敦
「復讐」 川端康成
「曾我兄弟」 西条八十
「武道伝来記 (抄)」 井原西鶴 訳::須永朝彦
「蟲臣蔵」 山田風太郎
「九州と東京の首」 長谷川伸
「或る女の復讐」 La Vengeance D'une Femme ジュール・バルベー=ドールヴィイ(Jules Barbey d'Aurevilliy)
「スターニスラワ・ダスプの遺言」 Der letzte Wille der Stanislawa d'Asp H・H・エーヴェルス(H. H. Ewers)
「続立腹帖」 内田百閒
「損なわれた青春」 ラドヤード・キップリング(Rudyard Kipling)
「ノースモア卿夫妻の転落」 ヘンリー・ジェイムズ(Henry James)
「梁氏の復讐」 元遣山『続夷堅志』  訳::岡本綺堂


と云うわけで、あまり暑気払いの役に立つようなものはなかったが、一番寒くなったのは、南条範夫の「復讐鬼」。 そもそも身体的に痛そうな描写が苦手な私にとって、片目を焼くとか、指を潰すとか、耳や鼻を削ぎ落とすといったリンチまがいの行為をし、でも死に至ることはないというのは、怖い。そしてそれが怨念と”因果は巡る・・・”的な動機で行わるとさらに怖い。眼をそむけたくなるような醜悪な身体にされた人間を無意味な使役に延々とつかせる。ここからは人間の尊厳を崩壊させるような仕打ちで、人格や尊厳を徹底的に破壊する行為が、復讐の最たるものなのかも知れない。これは実話だという書き込みも見たが、日本における古式ゆかしい復讐も、中世ヨーロッパの騎士道もある種の正義なのだが(忠臣蔵や決闘の類い)、その正義感は現代で社会的に認められようが認められなかろうが、時にスカッとすることも正直事実であったりする(人間って怖いねぇ・・・)

これを読んでしまうと、初っ端の久生十蘭の 「骨仏」なんぞは、かくも美しい復讐だし、ブラム・ストーカーの「牝猫」などは、復讐する猫に同情し見事成し遂げた暁には、アッパレ!と叫んでしまいそうになる。 復讐される人間様があまりにもおバカに描かれているのは、当時のヨーロッパ人がアメリカ人を馬鹿にしていた証拠なのかと、そこを笑ってしまう。ちなみに、ここで使われた道具は、「血の伯爵夫人」にでてきた「鉄の処女」なる拷問具なのかしらん?

既読は、「スレドニ・ヴァシュター」 サキ、「或る女の復讐」 ジュール・バルベー=ドールヴィイ、そしてヘンリー・ジェイムズの「ノースモア卿夫妻の転落」  (だと思う)。地味ながら「ノースモア卿夫妻の転落」 再び読んでも面白い。「牝猫」はさておき、それ以外は、人間の復讐劇で、復讐というものは、その手段が問題ではなく、そこに至る心理描写の妙なのだとしみじみ思う。暑気払い目当ての読書は結局、人間の怖さを味わされ、そして暑気はさらなるパワーで襲い掛かってくる (あ~~暑い)。
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