FC2ブログ

Entries

フランス組曲

高止まりしてなかなか手を出せなかった『フランス組曲』を断念して買った。イレーヌ ネミロフスキー の4冊目。今までの3冊は最近発売されたが、イレーヌ ネミロフスキー といえば、これでしょ、というのが映画化もされた『フランス組曲』、いや、これしか知らない、映画なら見たことある、という方が多いとは思うが、私は映画は見ていない。『フランス組曲』でググると、小説より、映画ばかりがヒットする。評判はよい。でも、イレーヌ ネミロフスキーの生い立ちや、死後数十年が経過し、奇跡のように陽の目を見ることになったエピソードが多すぎ(それはそれで商売上は大事だが)、小説それ自体をじっくりと書いてくれているサイトは案外なかった。こういうところは、映画化されてしまった弊害よね・・・と私なんかは時々思う。
「クリロフ事件」
「ダヴィッド・ゴルデル」
「秋の雪」

4560082456フランス組曲
イレーヌ ネミロフスキー 野崎 歓
白水社 2012-10-25

by G-Tools

あとがきもいれると560ページ。通勤の友にするには厚過ぎる。そしてバッグに押し込まれて旅をした本は劣化する。

第一部の「六月の嵐」と第2部の「ドルチェ」、そして著者の書簡など資料が一杯ついている。訳者は、野崎歓と平岡敦の両名。 贅沢だ。ネミロフスキーの構想としては4部(5部?)あったのだが、残りの2部(3部?)は完成しないままアウシュビッツで絶命。書簡や制作ノートがこれだけ豊富な本も珍しいが、1部・2部を読み終え、実際に巻末資料を読んでちょっと驚いた。作家がどのように執筆活動を行うのか、構成を練るのか、は、素人には知る由もないし、それぞれ独自のやり方があるのだろう。が、こんなことを考えて彼女は作品を作り、そして作品を読んでみると、とても腑に落ちる箇所が多い。そして彼女の、どの登場人物に肩入れすることなく、そして過剰にセンチメンタルにも感情的にもならない、ちょっと引いた視線というのもなるほどなんだな。悲しみを表現するのに直接的に涙を描くのではない、当の本人さえも描かず、その周辺を描くことで伝わるもの・・・ まあ、そんな感じなんだろ。お涙頂戴でも勧善懲悪でもないのは彼女の特徴ともいえるし、それが私の好きなところだし、この良い意味での冷徹な眼こそがネミロフスキー。

作品それ自体については、実は、面白かったも物足りなかったもない。これは明らかに完結していない。起承転結で言えば、起と承しかない。物語はこれから佳境を迎えるのに終わってしまった。登場人物が多いが、混乱しない。つまり緻密な構成とキャラクター作りがきちんとしているんだろう。翻訳も読みやすい。この重奏的な構成がまさしく組曲だが、正直、中途半端に煽られて、手を引かれた気分(笑)。独立したエピソードとして、第2部の「ドルチェ」で映画を作ったというのは、ある意味正解で、映画だけ見ていれば、フラストレーションはなかった。それがとにかく残念。かといって、他の誰かが続きを書いても仕方あるまい。だから巻末の沢山の資料まで読了して、どうにか心が治まる感じだ。それでも読んだことに後悔はないけどね。
関連記事
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://besideabook.blog65.fc2.com/tb.php/768-07078712

トラックバック

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

プロフィール

Green

Author:Green
夜な夜な本読む・・・日本語は海外文学ばっかり。英語はフィクションばっかり。喰わず嫌いでどこまでいけるのか?

流行りモノとか、人気モノとかすっかりどうでもよくなり、本と散歩とあとはぼぉ~~っとすることだけが今の楽しみ(それでいいのか?)

Calendar

<
>
- - - - - - -
- - - - - 12
3 4 5 6 7 89
10 11 12 13 14 1516
17 18 19 20 21 2223
24 25 26 27 28 2930
- - - - - - -

全記事

フリーエリア

フリーエリア