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悪魔の涎・追い求める男

ラテンアメリカ十大小説を書きながら、そうそう忘れてた、と思い出したJulio Cortázar. 今のところ私にとっては短編界の王様。石蹴り遊び (ラテンアメリカの文学 (8))が読みたくて仕方ないのだけど、文庫本(上下巻で発売)でさえ、1巻が¥4,000とか¥5,000と目が飛び出るほど高い希少本となっていて、ちょっと手が出ない。これは短編集で容易に入手可能で、入門篇のオイシイとこ取りというところだけど、それでも必読、十分堪能しました。
悪魔の涎・追い求める男 他八篇―コルタサル短篇集 (岩波文庫)悪魔の涎・追い求める男 他八篇―コルタサル短篇集 (岩波文庫)
(1992/07/16)
コルタサル

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ベルギー生まれ、アルゼンチン育ち、その後フランスに渡り、パリで没。ラテンアメリカらしからぬどこか乾いた感じと、フランス仕込み(なのか?)シュールレアリズム的な不思議な作風。ラテンアメリカのマジックリアリズムはあまり感じられないけれど、時空の飛び方はヨーロッパ的ではない。。。現実と非現実が入り混じりながらも、舞台設定だけは日常で、気付かぬ内に違う時空に連れて行かれている。ラテンアメリカ十大小説で 「悪魔を見たり、何かのオブセッションに取り付かれると、どうしても振り払えなくなる、それを言葉で語って短編という形にしてはじめて、その呪縛から逃れられる」 って言われてみて、これはすべて彼の白日夢なのか、と直一層無気味に思えてきた。

全部で10篇収められているけれど、どれも秀逸。

「パリにいる若い女性に宛てた手紙」
間歇的に口から子兎を吐き出す病気のため、借りているアパートが子兎で一杯になってしまう男の話。口から子兎を日常茶飯事のように吐き出し、普通に日常を送っているからそれだけで参る。

「悪魔の涎」
公園でふとしたことから男女を盗み撮りした男が、その写真の世界へ引きずり込まれる。イタリアの巨匠、ミケランジェロ・アントニオーニの「欲望」の原作だそう。短編は良質の写真のようだ、というけれど、まさに日常の一瞬を切り取った写真から始まる怖い話し。

「追い求める男」
一番シュール感はないかも。才能がありながらも薬物に耽溺し破滅に向かうサックス奏者(チャーリー・パーカーがモデルらしい)をジャズ評論家の男の眼から描いた作品。

「南部高速道路」
高速道路での渋滞が何ヶ月も続き(この設定で既にヤラレる)、やがてそこで生きてゆくために原始的なコミュニティーが発生する。そして突如として渋滞は解消され、何事もなかったように車は動き出していく。現代的な高速道路というもっとも現実的な設定から展開していく非現実性が凄い。

「ジョン・ハウエルへの指示」
演劇を観に来ただけの評論家の男が、なぜかその劇の舞台に立たされる羽目になる。とそのうち舞台の役になり切ってしまうという悲喜劇的な話し。怖くはなかったけれど笑ってしまうような喜劇ではないな。

理性や合理主義、彼に言わせるとまやかしのリアリズム、を否定した果てが彼の短編。日常も非日常も、夢も現実も彼の話しの中では区別がない。それが人間ってこと?
それにしても、口から子兎は、やっぱり怖い。。。
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