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この世の王国

本は本を呼ぶのです。この記事の予言どおり、いやAmazonではポチらなかったけど、古本屋で必然の如く巡り会ってしまいました。キューバの作家、Alejo Carpentier.
この世の王国 (叢書 アンデスの風)この世の王国 (叢書 アンデスの風)
(1992/07)
アレホ カルペンティエル

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マジックリアリズムとは何か異国の地の途轍もないかっ飛んだお話しのように思っていたけれど、これを読んでいたら、日本のお伽噺や怪談話もかなりなものだと今更ながら思った。人間が動物に変身したり、飛ぶはずのないものが空を飛んだり、日本だってかなりマジックリアリズム、アニミズム信仰や呪詛なんてまさにそれじゃなかろうか?Alejo Carpentierもそうだけれど、ヨーロッパで暮らし、そこでシュールリアリズムの洗礼を受け、祖国に戻るとそこにある現実はシュールリアリズムより過酷な現実だった、つまりシュールリアリズムなんてある種の綺麗ごと、ヨーロッパ的な理性と秩序は新大陸では根付かなかったのと同じことなんだろう。

舞台はカリブ海の島ハイチ。黒人・白人・ムラート(混血)が入り混じる植民地での、独立を巡る暴動と弾圧と反乱と殺戮の歴史が描かれていく。1700年代に起こったハイチ独立は、ラテンアメリカの最初の独立運動で、黒人による初の共和国を打ち立てたのはハイチらしい。実在の人物が登場する、黒人・白人・ムラートの殺戮の歴史が語られながら、それはブードゥー教を根源とする魔術色で薄められ、残虐さよりも、楽天的(と言うのは正しくないかもしれないけど)な逞しさが溢れているという不思議な印象。

白人支配による圧制の後革命が起き、黒人が国王となり、なのに白人よりもさらに一層黒人を弾圧する独裁政権が生まれる。そして次にはムラートによる独裁という皮肉の連鎖。肌の色が違っても独裁者になった瞬間、人は民衆のためではなく、自分の王国を築き始める。農園の黒人奴隷ティ・ノエルが語り手なのだけれど、薄い本ながら1750年頃から1820年頃までを描き、最後にティ・ノエルが ”自分は数え切れない世紀を生き抜いた老人になったような気がした”とつぶやきながら、こう達観する。
さまざまな悲しみと義務に苦しめられ、貧困にあえぎながらも気高さを保ち、逆境にあっても人を愛することの出来る人間だけが、この世の王国においてこのうえなく偉大なものを、至高のものを見出すことができる。
ペシミスティックなこの世の王国を味わった果てのラテン的なる楽観主義(が結論か?)
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夜な夜な本読む・・・日本語は海外文学ばっかり。英語はフィクションばっかり。喰わず嫌いでどこまでいけるのか?

流行りモノとか、人気モノとかすっかりどうでもよくなり、本と散歩とあとはぼぉ~~っとすることだけが今の楽しみ(それでいいのか?)

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