FC2ブログ

Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://besideabook.blog65.fc2.com/tb.php/783-7bdc9052

トラックバック

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

ソラリス

なんでも、NHKの『100分で名著』で昨年で、翻訳者、沼野充義氏が自ら登場し、自ら『ソラリス』を語ったらしい。番組は知っていたが、たまたま見ていたことがあるくらいの番組。このハヤカワ文庫は、沼野充義氏による初のポーランド語原典からの完全翻訳版。まだソ連が存在していた頃、タルコフスキー監督が作った映画『惑星ソラリス』の方が有名(いや?、この映画自体もマニア推奨映画だから、一般的ではないな)だと思うが、私もそっち派。『惑星ソラリス』はテレビで見た記憶があるが、記憶しかない。映画を絶賛していた友人がいたが、つまらなかった印象はない。ないが、不思議な映像だったことはぼんやりと覚えている。なんでも、タルコフスキー監督とレムは映画の製作をめぐり、ケンカをしたそうな。どっちがよいということより、読んでみればなるほど、これはSFカテゴリーに分類されるのだろうが、私にとってはもっと超越したものだった。どう解釈して、何にフォーカスするか、映像と文字という違いで、表現が異なるのは至極当然かもしれない(と、読了後は思う)。

4150120005ソラリス (ハヤカワ文庫SF)
スタニスワフ・レム 岩郷重力
早川書房 2015-04-08

by G-Tools

惑星ソラリス―この静謐なる星は意思を持った海に表面を覆われていた。惑星の謎の解明のため、ステーションに派遣された心理学者ケルヴィンは変わり果てた研究員たちを目にする。彼らにいったい何が?ケルヴィンもまたソラリスの海がもたらす現象に囚われていく…。人間以外の理性との接触は可能か?―知の巨人が世界に問いかけたSF史上に残る名作。レム研究の第一人者によるポーランド語原典からの完全翻訳版。

レムの小説を読むのは初めてではないが、読む前から彼の小説は難解だと決めつけていた。が、難解さを凌駕する面白さだった。面白いは正確に云えば、”怖さ”。止められない怖さ。ケルヴィンが最初にソラリスにステーションに着陸した時の異常さ、そして変わり果て、正気を失ったような研究員たち、何が起きても冷静でいろと云われ、一体何が起きたのかわからずに、ステーション内を探索するケルヴィン、そしてそこで自殺した昔の恋人が現れる。怖い。。。が上手い。

人間の記憶を読み取り、意思を持ったソラリスの海は、人間という形態の物体を作り出し、その記憶の主に送り込む。原形質を素材としてさまざまな形態のモノを創造するソラリスの海。過去何年にも渡って、人間はその謎の海を解明しようと試み、いくつもの観察と実験が行われ、いくつもの仮設が立てられた。それはソラリス学と呼ばれる1つの分野として存在するが、人間はいまだにその海の意思を解明できないし、意思を持つ海とコンタクトをとることができない。

ケルヴィンは、ハリーを自殺に追い込んだという負い目を持つ。再び目の前に現れた触れたくない過去から逃れようと、彼はハリーを宇宙船で飛ばしてしまう。が、海はまたハリーを創り出し、ケルヴィンの元に送り込む。そして徐々にその虚像のハリーを愛し始めるケルヴィンの心の葛藤。そんなロマンス(?)も含めて展開するSFを超えたSFだ。単なる創造物、いうなれば、ロボットであるハリーは、ケルヴィンと関わることにより、自意識が芽生えてくる。そしてケルヴィンも、死んだハリーではなく、眼前にいるハリーを愛し始める。自らの正体を察し始めたハリーはケルヴィンのために自殺しようとさえする。

本書で難解と云われるのは、数十ページにわたるソラリス学の章だろう。生物学、物理学、数学、果ては哲学、神学に渡る考察の果て、人間は未だに海とコンタクトすることができない。従来の異星ものでは、人間が勝つか、異星人が勝つか、共存の道を選ぶかしかなかった。そこにいる異星人は、「人間形態主義」と呼ばれる、どこまで行っても人間の延長にある異星人であり、ソラリスの海のようにあまりにも異質な存在の前で、人間以外のものに人間の特徴を見出して理解しようとする姿勢は全く歯が立たない。自分たちの世界の常識の中ですべてを理解することは不可能だが、人は往々にしてそうだ。宇宙へ行かずとも、地球の中に生きる人間以外の生物に対しても人間形態主義で理解し、そして人間同士でさえ、異なるものは排除することで生き延びようとする。

ニュートリノまで登場させ、科学の力でコンタクトを試み続ける惑星の科学者たちだが、ケルヴィンが最後に取った行動は、平たく云えば直接自分の足で、敵地に乗り込む作戦。海が人類との意思疎通を望んでいて、方法を試行錯誤するということ自体が、そもそも「人間形態主義」なのかもしれない。不完全な神、出来損ないの神もいる。そして海が何なのかは明らかにならないまま、ケルヴィンは海に向かうところで終了。

面白いけど寝てしまう映画『惑星ソラリス』は、もう一度見なくてもいい、それならもう一度この本を読み返した方が、きっと数倍面白い。
関連記事
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://besideabook.blog65.fc2.com/tb.php/783-7bdc9052

トラックバック

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

プロフィール

Green

Author:Green
夜な夜な本読む・・・日本語は海外文学ばっかり。英語はフィクションばっかり。喰わず嫌いでどこまでいけるのか?

流行りモノとか、人気モノとかすっかりどうでもよくなり、本と散歩とあとはぼぉ~~っとすることだけが今の楽しみ(それでいいのか?)

Calendar

<
>
- - - - - - -
- - - 1 2 34
5 6 7 8 9 1011
12 13 14 15 16 1718
19 20 21 22 23 2425
26 27 28 29 30 - -

全記事

フリーエリア

フリーエリア

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。