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砂の都

Marcel Brion は、アイルランド系の父と南仏に先祖を持つ母の間にマルセイユで生れている。美術評論家、考古学者、伝記作家、歴史家、小説家と多彩な人だったらしい。両親の血が混じり合った先にあったのは、砂の都、それは、アフリカのサハラではなく、シルクロードが貫く中央アジアの砂の都の物語になった。

4896421868砂の都
マルセル ブリヨン Marcel Brion
未知谷 2007-04-01

by G-Tools

下記は出版元、未知谷のサイトから;
幻想は絶えず自身を養い続け、それ自体の織り出す夢によって疲れを知らずに増殖し続ける――
マニ教遺跡があるらしいとの噂に中央アジアのシルクロードを訪れた考古学者が一人、突然襲う砂嵐の中、13世紀と思われるオアシス都市にワープする……
幼い頃の思い出を魂の片隅に留める者には、星辰と共に言いようもなく懐かしい夢物語であり、1959年の初版以来、フランスでは現在も文庫版で久しまれる幻想物語。SF小説と分類される場合もある作品。


最近、どうものめり込んで本を読めない私が悪いのかと思ったが、ドラマティックな展開もなく、淡々と硬質で美しい文章で構成されるこの本は、ヨシフ・ブロツキーの「Watermark」みたいに、読んでいるのか思索しているのか自分でもわからなくなるような本なんだろうと思う。エキゾチックな物語と云ってしまうと、少し違う。今までシルクロードも含め、中央アジアの砂漠のことなど、想像もしたことがなかったが、それはタイムワープしようがしなかろうが、時計というより、砂が刻む時だけが流れる世界で、目から鱗が落ちる思いだった。 この本、じわじわと馴染んでくる。

砂と星。これがこの本のすべて。ワープなどと云う言葉を使うと、突然時空を飛び越えたような印象だが、そこにはSF的な要素は全くなく、ただ砂のように時がさらさらと流れただけだ。考古学者は砂嵐を避けるため、数日間も洞窟に閉じこもる羽目になる。嵐は数世紀にわたって積もり積もった砂を押し流し、そこに古代の都市が現れ、そこは13世紀の砂漠のオアシス都市だった。考古学者は遺跡を巡るわけでもなく、発掘調査をするわけでもなく、その古代都市で暮らす。バザールに出かけ、絨毯や装飾品売りと話し、そして美しい娘と結婚し、子供までもうける。語り部や魔術師のような人たちも登場する。しかし、それらはどこまで行っても淡々とした日常の暮らしだ。神秘的であり幻想的であるが、考古学的・美術的評論の欠片もない。

やがてオアシスはモンゴル軍の攻撃を受け、そして砂嵐に襲われ、砂漠の中に人建物も町も埋もれる。そして考古学者は目覚める。確かに夢ではあったのだろう。だが、彼の手には古代都市のバザールで手に入れた指輪がしっかりと残っている。

更にじわじわと好くなってきた。
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[C568] お久し振りです

水声社より夜のみだらな鳥が26日に刊行予定。
このシリーズでは初の初の3000円超えと結構強気の値段を提示。
楽しみです。
  • 2018-02-06 19:19
  • たなか
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  • 編集

[C569] お久し振りです

見ました、見ました!!
今月26日ですから、もう信じてよいですね。このシリーズ初の3000円超えですか!でも586ページなのでボリュームあるし、昔の集英社の古本が今でも7,000で、その昔はさらにとんでもない値段だったので、免疫ができてしまいました。
さて、新刊に手を出すべきか、様子見すべきか、思案中です。


  • 2018-02-07 15:43
  • Green
  • URL
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[C570] 介護

先日、実家の山口に帰省。
90の婆様を70の父と母が介護中。

ブログはちょくちょく拝見させていただいていまして私の少し上のお姉さんくらいと推測いたしますが、以前お父様の認知症の件について書かれていた事を思い出した次第です。
うちはとりあえず認知症は発症していませんが、程度にもよりますが大変かと、思われます。
今、このまま東京に住むか、実家に戻るべきか悩み中です。
多分、こちらに残り二ヶ月に一回くらいのペースで様子を見るようになると思われますが。うーむ。
夜のみだらな鳥どころではないのですよ。
因み今、別荘読んでます。
  • 2018-02-07 20:07
  • たなか
  • URL
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[C571] Re: 介護

御推察のとおりです。

介護に限ったことではないですが、事情は人それぞれ、家族それぞれです。認知症というものも、おそらく人それぞれ様々な症状があるものなのだと思います。私は帰省して2年半ですが、週末だけ帰るという暮らしはその前に6-7年続きました。自分の場合しか語れませんが、介護のため帰省を決めたのは建前で(笑)、介護付を了解して、東京暮らしをやめた、というのが本当のところです。介護はする人が健康であることはとても大事なことだと思います。自分が不幸だとできないどころか、親と共倒れになります。私は独り者ですから、働かなくてもはなりません。多少親を犠牲にしてもです。世間から親の介護は当たり前のように云われることもありますが、無視(笑)します。一人ではとても無理なので(無理な場合は絶対にあるので)、少し離れたところに住んでいる妹と、ヘルパーさんと、昔からのご近所さんには本当に助けられています。

なんの参考にもならないかもしれませんが、無理しない良い方法が見つかればよいと願っています。
  • 2018-02-08 14:24
  • Green
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Author:Green
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