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ミステリウム

「パラダイス・モーテル」に続いて、Eric McCormack の2冊目。彼の本は読みやすいし、飽きずに一気にいけるのがいい。停滞気味の時にはもってこい!

4336053189ミステリウム
エリック・マコーマック 増田 まもる
国書刊行会 2011-01-25

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小さな炭坑町に水文学者を名乗る男がやってくる。だが、町の薬剤師の手記には、戦死者の記念碑や墓石がおぞましい形で破壊され、殺人事件が起こったと書かれていた。語り手である「私」は、行政官の命により、これらの事件を取材することを命ぜられるが、その頃、町は正体不明の奇病におかされ、全面的な報道管制が敷かれ、人々は次々に謎の死をとげていた。真実を突き止めようと様々な人物にインタビューをする「私」は、果たしてその真実を見つけることができるのか……。謎が謎を呼ぶ、不気味な奇想現代文学ミステリの傑作!

反則ではないが(笑)、今回も帯に”柴田元幸氏絶賛"とあった(だから人気になっちゃうんじゃん)。嫌われているガイブンにもこういう作品があった方がいいことは認める。だがEric McCormackって英語版Wikiはあるけど、日本語版はないところを見ると、柴田氏を投入してまで行っているプロモーションはすっごく成功しているわけでもないのかな?彼は御歳80歳になる。出身はScotlandの小さな炭鉱町で、その後カナダへ移住している。大学で教えることと、研究論文を書くこと、そしてこの「ミステリウム」のような本を書くこと。だからそれほ多作ではない。

「パラダイス・モーテル」を読んだから、ミステリといいながら、最後の謎解きはどうでもいいのだろうという想像はしていた。二転三転も予測した。殺人事件の犯人が曖昧なまま終了するのも想定内。それでもエピソードの散りばめ方、”信用できない語り手”手法、グロテスクすれすれの惨殺シーン(それが今回も冷たくてシュール)、 偶然なのか運命の必然なのかという巡り合わせの妙・・・等々、謎解きだとすると所々突っ込みはあるにせよ、エンタテイメントだと思うと、つっかえることなくどんどん読める気持ちよさは好きだな。

本の中で唯一といってもいい信用できる語り手は「私」だけで、それ以外は、何らかの意図をもって書かれた手記と口頭による証言、それを「私」がテープからおこして要約した文章。それらが、代わる代わる現れる。以下は、「私」に任務を要請したブレア行政官の言葉。
このキャリックの謎では、ひとつの可能性がべつの可能性へと溶け込んでいくのが、なんとも奇妙だとは思わないか? まるで上に書かれているテキストをこすり落とすと、その下からべつのテキストが現れる中世の手稿みたいじゃないか。たぶんその下にも、そのまた下にも。これが私のいいたいことであり、きみに考えてもらいたいことだ。
つまり、話は結論に向かって収束するのではなく、より曖昧な曖昧な方向に向かって行く。ちょっと凝り過ぎの感があるので、素直に好きだとは云えないのだが、こんな構成をよく考えるなあ、と感心はしてしまう。

若干、原文の英語が透けて見えるような翻訳が気になるのが難点。未邦訳のオリジナル英語版にまで手を出すか出さないかは現在思案中。
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夜な夜な本読む・・・日本語は海外文学ばっかり。英語はフィクションばっかり。喰わず嫌いでどこまでいけるのか?

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