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ボートの三人男

どうも最近、光文社の古典新訳文庫で、「ボートの三人男 もちろん犬も」が発売になったらしく、Twitterでちょくちょく見かけた。当然新刊は高いので、新訳じゃなくて中公文庫版にしてみた。こちらの翻訳は丸谷才一、なんだ、いいじゃないか。。。ということですんなりこちらを購入。

4122053013ボートの三人男 (中公文庫)
ジェローム・K. ジェローム 丸谷 才一
中央公論新社 2010-03-25

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Jerome Klapka Jerome(1859年5月2日 - 1927年6月14日)は、一時代前のイギリスの作家ではあるが、訳も上手いし、1898年刊行のくせに古さは全くない(日本で云えば、明治の御代)。ユーモア作家というくくりになっているけれど、日本語Wikiではこの「ボートの三人男」の一発屋みたいな扱いだが、実は作品はたくさんある(でも邦訳がないのかな?)。ただこの「ボートの三人男」のヒットぶりや相当爆発的なものだったらしく、映画、テレビ、ラジオ、舞台劇、ミュージカルになり、テムズ川下りの観光に多大なる影響を与えたという。とにかくイギリス臭がベタベタで、ユーモアやギャグだけでなく、食事から景色から精神構造に至るまで、モンティパイソンとウッドハウスを混ぜ合わせてさらにパワーアップさせてくらいのイギリス度合。

Englandの地理と歴史がもっとわかればどれだけ楽しめたろう・・・と真面目に後悔した本。情報が足りなくて脳内画像が浮かびきれないのが悔しかった。が、三人男が旅したテムズ川を遡る旅のルートはこれ。

three men in a boat

この三人男は中産階級くらいなのだろうか?気鬱に取りつかれた三人の紳士となっているが決して有閑階級でなく、視点は庶民のそれに近いので、ギャグに混ぜた皮肉も社会風刺を含んでいる。含んでいるが風刺が全面にでても面白くもなんともないので、ただこのおバカ三人男の珍道中が楽しいし、語りが饒舌。バカ話しばっかりでもなく、そもそもテムズの歴史と地理がを描こうという発想から生まれた作品なので、至極真面目な(笑)話しもあるし、そして河岸の風景、町の様子、天候で変わる景色など、詩人のような美しい文章もあり、実に多彩で艶やかだ。もちろん私は邦訳で読んでいるので、半分は丸谷才一氏の腕なんだろうな。

行きはテムズを上り、帰りは下りなわけだが、終点のOxfordに到着してからLondonに帰る帰途の話しは、最後のほんの数ページ。それも雨にたたられ、長旅に疲れた3人+1匹の惨めな姿。ロンドンを目前に彼らはボートを捨てて、暖かいまともな食事を目指し、やっと乾杯にありつく。今までの馬鹿話はなんだったんだ!と云いたくなるほどのあっけない幕切れだが、いやいや、それでも3人と1匹は楽しんだんだろう、そして喉元過ぎれば熱さを忘れるの諺のごとく、再びテムズでボートを漕ぐのじゃないだろか?とほんわかとした気持ちにさせられる。

ネットで見たレビューの中には再読派が多数いて、読み終えた私は今その気持ちがとてもよくわかる。大袈裟に云えば、人生っていいもんだ!と思わせてくれるので、そう思いたい時にはこの本を広げてしまうかもしれない。そして読んだ人はそれぞれに自分のツボにはまったエピソードを披露してくれているが、パイナップルの缶詰との格闘という最大のライバルを押しのけて、私が一位に推薦するのは、巨大鱒の話し。この起承転結具合とオチは、まさしく落語の世界だ。古今東西可笑しな話しは共有できる。

いやいや、楽しい読書だった。
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夜な夜な本読む・・・日本語は海外文学ばっかり。英語はフィクションばっかり。喰わず嫌いでどこまでいけるのか?

流行りモノとか、人気モノとかすっかりどうでもよくなり、本と散歩とあとはぼぉ~~っとすることだけが今の楽しみ(それでいいのか?)

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