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パリに終わりはこない

貴重なスペイン作家。「ポータブル文学小史」以来、3冊目の邦訳だが、ググると案外ヒットするのよね、彼の本。現代の若者だと勝手に思っていたが、改めて調べたら1948年生まれだったから、齢70を超えていた。今回の本は1970年代に滞在したパリの話しだが、確かに若かりし日のパリの話しだったら、1948年生まれじゃないと合わない。
4309207316パリに終わりはこない
エンリーケ ビラ=マタス Enrique Vila‐Matas
河出書房新社 2017-08-25

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ヘミングウェイに憧れ、処女作 『教養ある女暗殺者』 を書くためにパリにやってきた「私」はマルグリット・デュラスの家の屋根裏に下宿する。これは、実体験らしい。彼のパリ生活は、もちろん、「移動祝祭日」が下敷きにあるわけだが、そのカッコいいヘミングウェイの、ちょっと貧しくでも幸せなな若き日のパリでの暮らしのようにはいかず、カッコ悪くて貧しくて不幸な自分を自虐的に描いて笑わせてくれる。その「私」だが、フロリダ州キーウェストでおこなわれるヘミングウェイそっくりさんコンテストにエントリーするが、「外見上ヘミングウェイにまったく似ていない」という理由で失格になってしまう。本人はいたく自信ありげなのがまた可笑しい。下宿先大家であるマルグリット・デュラスに家賃は一度も払わず、彼女が家賃の話しを始めると、その”すばらしいフランス語”が全く理解できなくなってしまう。そしてヘミングウェイに憧れつつ、パリではサルトルのマネをして眼鏡をかけ、パイプをくゆらせたりする。自意識過剰を自らギャグにするわけだ。

「ポータブル文学小史」でもそうだったが、登場人物の豪華さは今回も凄い。ロラン・バルト、ジョージ・オーウェル(の妻)、ジョルジュ・ぺレック、なんとデビュー前イザベル・アジャーニ、ちなみに彼の下宿先はレジスタン運動時代のミッテラン元大統領が数日滞在したという。登場しないまでも言及される作家、画家も数多あり、これがある限り彼の本はどうしても読みたくなってしまうのは、致し方ないところ。

現在の「私」と、その「私」が過去のパリ暮らしを回想するという構造だが、現在の「私」は”アイロニー”について講演するという設定。アイロニー=皮肉 ではなく、”表面的な立ち居振る舞いによって本質を隠すこと”(wikiより)で、あのソクラテスは、知っているくせに知らないふりをして会話をする(=無知のふりをする)という少々意地悪な手法をとったという。このアイロニーが本書のキーワードなのね、とわかったふりをしてみたが、で、このアイロニーは最後はどうなったんだろう?そして、なんだったんだろう、この本・・・って読了後思いながら、でも何だか楽しい読書だったなあ、ああ、翻訳は、前作、前々作から引き続き、木村 榮一だ。秀逸です(って私が云うのもおこがましいが・・・)。
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