Entries

青春の絆

本は神保町の古書街で見つけ、安かったから買ってしまった1975年晶文社発行のもの。Cesare Paveseの本は、この1970年代に出た晶文社のシリーズ、同じく1970年代に出た集英社版「世界の文学 パヴェーゼ集」、これはカバーケースにはいった全集でちょっとゴツイ。数冊岩波文庫で文庫化され、数年前「パヴェーゼ文学集成」というケースカバーつきのゴッツイ本がやはり岩波書店から出版された。豪華な装丁の書見台にのせて読むのかと見まごう程のこの本は1冊¥5,000の全集で、揃える気概は私にはない。晶文社のパヴェーゼ全集は持ち運び可のハンディタイプで、一番好きだ。
チェーザレ・パヴェーゼ全集〈5〉青春の絆 (1975年)
青春の絆
1908年生まれ。20世紀イタリア文学におけるネオレアリズモの代表的な作家の一人。マルクス主義者でもあり、パルチザン活動も行っていた。そして1950年、服薬自殺にて42歳の若さで没。パヴェーゼの本は盛り上がりもあまりなくて実際、暗い。原題は 「Il compagno(仲間)」。 邦訳題が「青春の絆」では21世紀にはいった現代では、小っ恥ずかしい感があるけれど、邦訳が出版されたのは1975年で、当時は学生運動や浅間山荘事件の記憶も生々しい頃。記憶の片隅にはあっても、私には幼すぎて実体験というものはないけれど、この暗さ、生真面目さ、青臭さ(?)はそんな時代を彷彿とさせるものがある。

戦中~戦後イタリアでネオレアリズモが盛んだったのは1940年代から1950年にかけての、ファシズムとナチズムに対する抵抗と、戦後混乱期の時代。作家や映画人が政治闘争と関わり、パルチザン闘争、労働者の要求、市民の暴動といった主題がテーマとして取り上げられる。代表格は、ロベルト・ロッセリーニの映画「無防備都市」、ヴィットリオ・デ・シーカの映画「自転車泥棒」、カルヴィーノの「くもの巣の小道」、エリオ・ヴィットリーニの「シチリアでの会話」、そしてこのパヴェーゼ。本を読んで歴史を勉強しようなどという気はさらさらないけれど、何故か好きなイタリア文学を読みながら、今の陽気なイタリアからは想像も出来ない貧しさと闘争の時代は少しずつわかってきた。それでも心が痛くなるようなリアルさは、正直読んでいて楽しい気分にはさせてくれないものだから苦手意識はあった。でもだから読むべきなのかも(と自分に言い聞かせてみる)。

前半の舞台はトリノ。ギター弾きの主人公パブロは、友人の彼女に振り回される”青春”時代。その後舞台はローマに移り、周りに政治的な人物が現れ始める。パブロ自身にさほど政治色はないけれど彼らに巻き込まれ、自身も”別の人間になった”と自覚し、逮捕と投獄と仲間の裏切りを経験する。政治的な語りは周辺の仲間の口から発せられる。
・幻想は持つな。・・・・自分の皿や自分のポケットを守っているのだよ、ブルジョワたちは。
・恐ろしくなったときには、ぼくたちはみなブルジョワなのだ。目を閉じて、嵐を見まいとするのは、要するに恐ろしいからだ、それはブルジョワの恐怖心だ。

でもパブロ自身は、こんな風にしか語らない。
・ぼくは・・・獄舎に閉じ込められた人たちのことを考えていた。死者やこの世で死にかけている人たちのことを考えていた。ぼくたちが勝利をおさめたら、この世はどうなるのだろう。・・・・恐ろしくすばらしいことは束の間しかつづかないのだ、そして何事も変るはずはないのだ。
本の端々に覗くイタリアの美しい風景。これを読むと42歳で命を絶ったパヴェーゼの独白に聴こえる。
関連記事
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://besideabook.blog65.fc2.com/tb.php/81-4d1dc347

トラックバック

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

プロフィール

Green

Author:Green
夜な夜な本読む・・・日本語は海外文学ばっかり。英語はフィクションばっかり。喰わず嫌いでどこまでいけるのか?

流行りモノとか、人気モノとかすっかりどうでもよくなり、本と散歩とあとはぼぉ~~っとすることだけが今の楽しみ(それでいいのか?)

Calendar

<
>
- - - - - - -
- 1 2 3 4 56
7 8 9 10 11 1213
14 15 16 17 18 1920
21 22 23 24 25 2627
28 29 30 31 - - -

全記事

フリーエリア

フリーエリア