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ブライヅヘッドふたたび

予告通り、素直に「ブライヅヘッドふたたび」を読み始めた。これは1981年イギリスでテレビドラマ化されていて、表紙はそこからのもの。主人公チャールスを演じているのは、なんと、若かりし日のジェレミー・アイアンズ。このドラマがネットで見ると、すこぶる評判がよい。ちょっと気になるところだ。

4480024514ブライヅヘッドふたたび (ちくま文庫)
イーヴリン ウォー 吉田 健一
筑摩書房 1990-08

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主人公はチャールスという画家である。冒頭、第二次大戦で陸軍大尉となっている彼が、豪奢な邸宅にたどりつく。そこはブライズヘッドと呼ばれるマーチメイン侯爵家の屋敷だが、彼が若かりし青春の日々に、Oxfordで出会った一家の次男セバスチャンの家である。そして物語は、戦争がはじまる前1920年代のOxfordに遡り、チャールスの回想が始まる。美しい容姿を持つセバスチャンには、うり二つの美しい妹ジュリア、いかにも名門家の長男のブライディー、信仰心はあるが器量は悪い末っ子コーデリアの三人の兄弟がいる。そして母はカトリックの信仰篤く、父はそんな夫人に耐えられず、別居しイタリアで愛人カーラーとともに暮らしている。

Oxfordで親友となったチャールスとセバスチャンだが、前半の上流社会の豪奢さはそのドラマ化された映像で見たら、さぞかし美しかろうと思う。中流出のチャールスにとって名門貴族に属するセバスチャンとは実は階級からすると格段の差がある。が、セバスチャンは、品行方正とは云えない放蕩息子的な描かれ方で、お堅いカトリック一家の中でも問題児だ。やや甘ったるい雰囲気も、ブライズヘッドを訪れ、マーチメイン侯爵家の面々が少しずつ現れると、とたんに面白くなってくる。父親不在、母はカトリックの信仰厚き旧体質の人間であり、名門家といえども英国におけるカトリックはあくまで少数派。マーチメイン一家の実情が明らかになるにつれ、そこに居場所を見つけらないでいるセバスチャンの心の内も見えてきて、やがて彼は飲酒におぼれ、大学も中退し、海外へ放浪の旅にでてしまう。 一家は実質家族としては破綻しており、そこにいる人々も皆それぞれに不幸だ。

英国内の少数派であるカトリックとその信徒たちのことは、つらつらとネットで見ていた。だが、こういうことは表面的な知識でどうにかなるものでもなく、それは日本で習慣との区別がつかなくなっている神道とか、天皇家の存在とも似ていて、理屈ではないところで、実感できるものなのかもしれない。だからお互いに結婚している身でありながら愛し合うチャールスとジュリアが最終的に破綻した理由、つまりジュリアがチャールスと結婚できないという気持ちがよくわからない。そしてカトリックへの信仰心薄いジュリアが、父の死をきっかけとして、それを捨てきれなくなる気持ちもわからない。ジュリアがチャールスと別れる時に云うには、今まで悪い事ばかりしてきたからこそ、神さまからの恩寵が必要で、だからこ神様なしには生きていけない、チャールスと結婚するということは、その後の人生を神様なしで生きていくということで、そこまで悪い人間になり下がることは赦されない(というようなこと・・・)
最後にカトリックの信仰を取り戻そうとするマーチメイン家の不幸せな人々こそが、悔い改め神の許しを得なければならない人々で、そして悔い改めさえすれば許されるのが、カトリックなのか?
滅びゆく名門貴族と対照的に登場するのは、ジュリアの夫レックスとチャールスの妻シーリアで、この二人は典型的な新興勢力であり、世俗的で無神論者として登場する。つまり、神によって救われるべき存在は、マーチメイン家のカトリック教徒たちで、この二人はアンチであり、その描かれ方も否定的だ。このアンチな二人は悲しいことにこの本に登場する誰よりもわかりやすい。決して悪人でもないし、現代の成功者でもある、が、いかんせん美しくないのだ。

戦時中、負傷したイーヴリン・ウォーがその隊を退いていた時に書いたといわれるこの本だが、その荒廃した時代だからこそ、美しき昔を描きたかったというが、信仰の問題はさておいても、世俗的な新興勢力の描き方はかなりえげつないし、ウォーの視点もそういうことなのだと段々わかってきた。これ、一見気づきにくいのだけれど、気づいてしまうと、驚くほどラディカル。イギリスで虐げられているカトリックなのに、大丈夫だったのか?と心配になる程。

テレビドラマ版見たいなあ。。。
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