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巨匠とマルガリータ

腰をすえて600ページに挑んでみたが、拍子抜けするくらい楽に読めてしまい驚いた。色々なバージョンがあるが、私は一冊ですむ河出のバージョン。ブルガーコフは先に「犬の心臓」を読んでいたが、ずいぶんと前のことだったので、彼の作風は思い出せない。ロシアと”20世紀最高のロシア語文学”という評、発禁本という三大名誉を引っさげているのに、笑いの要素が満載で、シュールというか荒唐無稽で、読む前の思い込みとのギャップがすごかった。それが一番の感想(笑)。

巨匠とマルガリータ (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-5)
ミハイル・A・ブルガーコフ
河出書房新社
売り上げランキング: 275,636


2部構成。第一部が種まき、第二部でバラバラのエピソードを回収という構成。登場人物が多い第一部で混乱する人が多いようだが、私は結果的には一部はかなり面白く読んだ。

スターリン時代の春の宵から始まるこの物語は、のっけから神(イエス)の存在論議があり、その存在を否定する文芸綜合誌編集長ベルリオーズ(こいつは体制派)が電車ではねられ、首が切断されるというショッキングなシーン。次は突然時代を遡り、ローマ帝国のユダヤ属州総督ポンティウス・ピラトゥスがイエスをゴルゴダの丘へ送ったエピソードが入る。その後は、悪魔ヴォランド一味が不可思議な魔力を発揮し、次々とモスクワ中を恐怖に陥れていく。ヴォランドが黒魔術ショーを行った劇場の関係者や、勝手に居座った死んだベルリオーズのアパートの関係者らが、殺されてり、気が狂って精神病院送りになったり・・・・ そしてベルリオーズの事故を目撃して気が触れ、精神病院に収容されたイワンの隣には、巨匠だと名乗る茫然自失になった作家がいた。彼はイエスをゴルゴダの丘へ送ったポンティウス・ピラトゥスを主人公にした小説を書いたが、文壇で叩かれ失意の果てに原稿をすべて燃やしてしまったという。ここまではいい。

第二部は、巨匠の愛人マルガリータが悪魔に魂を売ってまで、恋人を助け出す話をメインに、相変わらず奇想天外、荒唐無稽な悪魔一味が大暴れし、モスクワ中を混乱に陥れる話なのだが、盛り上がらなければならない第二部でちょっとダレた。マルガリータが悪魔の弟子になるくだり(クリームを塗りたくると、突然若返ったり、悪魔の舞踏会のシーン等々)は、ちょっと滑稽すぎるし、結局巨匠もマルガリータも救われるわけだが、そこには何でも出来ちゃう悪魔の魔術のおかげであり、彼らたちが何かをするわけではなく、魔術は所謂、チチンプイプイの魔法なんだな。無実のイエスを処刑したポンティウス・ピラトゥスが苦悩する話しが私は好きだったのだが、彼を救うのもチチンプイプイだった。

ブルガーコフは生前はスターリン時代の厳しい検閲で弾圧され、自分の作品は陽の目を見ないものも多かった。この作品にせよ、「犬の心臓」にせよ、それは明らかにスターリン批判ではあるのだが、悲痛な批判というより皮肉(笑いも込めて)以上の凄みが感じられなかったのは、私の未熟さ故か?? ブルガーコフの作家人生は彼が生きた時代には花開くことはなかったが、彼自身はスターリンとは知己の間柄で手紙を書ける位の立場ではあったらしい。不遇の人生を送ったとはいえ、劇作家という仕事につくことはできていた、ただ自分が書きたいものは決して認めてはもらえなかった。彼は体制を憎んだというより、ただ自由が欲しかったのか?という気がしてくるが、それが、悪魔という形を借りて自由奔放な世界を描いたのが「巨匠とマルガリータ」だったというのは、甘い見方だろうか?(だろうな・・・) 

よくよく考えると、この本、神と悪魔の戦い、じゃなくて、神を助けたのは悪魔だった。
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