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愛その他の悪霊について

ラテンアメリカ文学は2年半も読んでいなかった。ガルシア・マルケスは?と調べたら、このブログをはじめた2011年3月以降、一件の記事もなし。我ながらちょっと信じがたい。彼の邦訳された作品を調べつつ、本棚をがさ入れしつつ、5冊は読んだはずで、未読本も3冊あるぞ。
百年の孤独
ママ・グランデの葬儀
予告された殺人の記録
コレラの時代の愛
わが悲しき娼婦たちの思い出

これらは全部そんな昔に読んだのか・・・


ラテン文学デビューはおそらく「百年の孤独」だと思う。そして私のラテン文学読みは、ガルシア・マルケスから始まった。まだ訳もわからず本を選んでいた頃で、やっとこさ読んだという記憶は鮮明に残っているが、世界中のそうそうたる作家たちが絶賛する「百年の孤独」の凄さは全く実感できず、記憶にも残らずという、私にとってはトラウマにもなりかねない本になってしまった。読み直してみようじゃないか、ガルシア・マルケス。

おそらくこの本は読みやすいほうなのだと思う。登場人物もそう多いわけでもなく、魔術的な描写も多くなく、起承転結の筋書きもちゃんとある。時代は18世紀のコロンビア、スペイン植民地時代のカルタヘーナという町の物語。12歳になる侯爵のひとり娘シエルバ・マリアが、額に白い斑点のある灰色の犬に咬まれる。やがて彼女は狂乱する。狂犬病なのか、悪魔に憑かれたのか。シエルバ・マリアは両親の放任により奴隷たちのアフリカの風習と野生を身に付けて育っていた。内面もその暮らしぶりも全くもって奴隷たちと変わらないのに、その外見は完璧なまでの白人貴族のそれであった。悪魔憑きの疑いがあるとして修道院に入れられた彼女は、狂信的修道院長と司教らによって悪魔憑きとして隔離される。だが、悪魔祓いの命を受けて、修道院に赴いた神父デラウラ・カエターノは果たしてそうなのかと疑問を持つとともに、次第にシエルバ・マリアの存在が頭から離れなくなっていく。

これはもう明らかに悲しいラブストーリーで、「コレラの時代の愛」や「わが悲しき娼婦たちの思い出」に連なる晩年の作品だが、こういうのを書くから”あの”百年の孤独があろうと、ガルシア・マルケスの人気は息が長いんだろうなと納得する。もちろん単純ななラブストーリーというだけでなく、硬直的な旧大陸のヨーロッパ文化が、新大陸の自由な異文化を殺してしまう物語でもある。教会が君臨する抑圧的な世界の中で窒息死していくシエルバ・マリアや神父デラウラ・カエターノ、その世界に逆らえず自滅していくシエルバ・マリアの両親である侯爵夫妻。ここにでてくる登場人物たちには悲しい顛末しか与えられていない。神父デラウラ・カエターノが、禁断の恋に気づき始め、苦しみながら自問し、神父としてあるまじき幻想を打ち払うため、自分の身体を鞭打つ。

「私たちは、理解できないことをすべて悪霊の仕業と考えがちですが、私たちには理解できない神のみわざなのかもしれない、と考えてみなくてはなりません。」

最後は異端審問にかけられ有罪とされたデラウラ・カエターノを修道院で待ちながら、5回にわたる過酷な悪霊退治を受け、そして第6回目を迎えようという朝、夢の中で死んでいくシエルバ・マリアのシーンで終わる。生まれてから一度も切ったことのなかった長い長い髪を悪魔払いの儀式のため剃りあげられてしまったシエルバ・マリアの死んだ頭骨からは、新しい髪の毛があぶくのように湧き出し伸びていた。・・・・・こんなエンディングをもってくるから、ガルシア・マルケスって人気なんだよ。

今ガルシア・マルケスを新刊本屋で探すと新装版になっているが、私が読んだこれは昔の版で25年くらい前に買ったと思う。いったいどれだけ寝かせておいたんだと呆れるが、200ページとはいえ、定価は1700円。ガルシア・マルケスくらいなら増刷も期待されるが故の価格設定なのかもしれないが、安かったんだなあ、海外文学。。。 ちなみにこの古いシリーズの「百年の孤独」は1900円だ。私が持っているのは、1972年発行で1991年36版。36版って岩波文庫の古典じゃあるまいし、現在単行本でこれだけ版を重ねられる本はそうはない。それだけで「百年の孤独」は凄い。再読(というか、リベンジだな)しようかなあ・・・と、とりあえず本棚から手の届くところに移動させてみた。させてみて、眺めているだけだが・・・・
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夜な夜な本読む・・・日本語は海外文学ばっかり。英語はフィクションばっかり。喰わず嫌いでどこまでいけるのか?

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