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戦場の画家

おまけ買いってやつ。古本屋でお目当ての本を探し終えた後、近くに文庫だけど¥200、まあ通勤のお供にでもしようかな、そういえばスペインの作品は最近読んでいなかったし、西洋美術史にでてくるような画家の引用もたくさんあるし・・・と思って買ってしまったのがこの本。Arturo Pérez-Reverteは元ジャーナリストで戦場を渡り歩いた後、作家としてデビュー。売れっ子らしい。翻訳は木村裕美さん。どこかで聞いたことがあると思ったら、「The Shadow of the Wind」の翻訳をした人だった。Isabel Allendeも翻訳したことがあるらしいし、実は以前に読んだこんな本、「まぼろしの王都」の翻訳者でもあった。
戦場の画家 (集英社文庫)戦場の画家 (集英社文庫)
(2009/02/20)
アルトゥーロ・ペレス・レべルテ

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登場人物はほぼ3人。元戦場カメラマン、今は「戦場の画家」のフォルケス。そして元クロアチア兵士でフォルケスに写真を取られ、人生を狂わされたマルコヴィッチ。フォルケスの愛人のオルビド、彼女は戦場で地雷を踏み命を落とし、フォルケスの回想シーンの中に登場する。カメラマン生活から足を洗い、地中海をのぞむ望楼で戦争風景の壁画を描いて暮らすフォルケスの元に、ある日マルコヴィッチが突然訪ねてくる。彼の訪問の目的は「あなたを殺すためですよ」。

フォルケスとマルコヴィッチの心理的駆け引きとも言える6日間の物語。そのサスペンスドラマと平行して、フォルケスとオルビトの恋愛が回想として語られる。フォルケスの目は、作者、元ジャーナリストで戦場を渡り歩いてきたArturo Pérez-Reverte自身の目。フィクションなのだろうけど、彼自身が自らの人生のために書かざるを得なかった作品だという。世界各地の戦場の様相とその残虐な描写は彼自身が目にしてきた生の事実なのだろう。「戦争の画家」フォルケスが写真では表現できなかったことを壁画で再現しようとしたように、作者Arturo Pérez-Reverteもジャーナリズムでは表現できなかった戦争をこの本で再現しようとしている。

でも私には最後までわからなかった。この饒舌さ、装飾過多とも言えるような観念的な表現、彼がジャーナリスト生活に終止符を打ち、この本を書き上げるために必要だった10年の歳月とは何だったんだろう?それは自ら経験した生の戦争を昇華させるために必要だった距離なんだろうけど、私にはその生っぽさが味わえない(こういう時は、私って変?と思いながら自虐的になる)。彼が自分の過去を振り返り ”厳しい内省の行為” としてこの本を書くことを強いた理由は何なのか?

仕方ないので主題を大きくそらし、絵を見るのが好きな私はこんなところに反応してみる。
「いつの時代でも、すぐれた絵という絵は、そこに描かれていないもうひとつの風景の風景画であろうとしたのよ。」
「写真は嘘をつく。芸術家だけが真実を語る」

色々文句をいい、ちょっとがっかりしつつ、でも先へ先へと引っ張ってくれる緊迫度はあり、エンタテイメント性も十分感じる。それが、ちょっと悔しい(?)
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夜な夜な本読む・・・日本語は海外文学ばっかり。英語はフィクションばっかり。喰わず嫌いでどこまでいけるのか?

流行りモノとか、人気モノとかすっかりどうでもよくなり、本と散歩とあとはぼぉ~~っとすることだけが今の楽しみ(それでいいのか?)

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